地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

笑いは人類の歴史の中でどのように継承されてきたか?



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

広告


pocket LINE




題名:笑いは人類の歴史の中でどのように継承されてきたか?
報告者:ナンカイン

 本記事は、この記事の続きです。

 先のこの記事でヒトの心の進化において、他者を認識する枠組み(フレーム)のきっかけがお笑いであったことが推測された。しかしながら、太古の人類がそのお笑いをどのように捉えてきたのかについては、化石などの物的な痕跡は残らないため、類推するしかない。そこで、ここでは、現在のヒトの脳内ネットワークで笑いがどのように処理されているかを調べるとともに、太古の人類がどのようにお笑いを継承してきたのかについて一本の映画から探ってみたい。
 笑いを感じた際に、脳内の多く領域が連携され、複雑なネットワークで処理される。図に笑いの脳内ネットワークを示す。笑いは2つの独立した神経経路があり、扁桃体、視床、および、被蓋脳幹を介する経路と、前頭前野、補足運動野、脳幹、錐体路を介する経路があり、前者は意図しない感情的な笑い、後者は意図する笑いに繋がる2)。ここで、この記事とも併せて考えると、他の動物にも見られるただの笑いは、意図しない感情的な笑いに属し、ヒトの心の進化において重要であろう、お笑い、あるいは、乙(おっ)笑いは、他者の視点が内包されている絶妙な笑い(笑いの壺)であるため、意図した笑いに属する。中でも、特に前頭前野、補足運動野はヒトでよく発達していることが知られ、これらの領域は、抽象的な想像や運動の意志に関わる3)。このことから、笑いが進化し、意図的になる過程で、ヒトがよりヒトらしくなった可能性が脳内ネットワークからも明らかである。

the-laughter-network

図 笑いの脳内ネットワーク1)

 では、そのような過程はどのように調べることができるのであろうか。簡単な答えは、タイムマシーンで時代を遡ることで解決する。しかしながら、タイムマシーンは今現在完成していない。さらに光速を越える物質が見つからない限りは、この先は時間の矢に従って、過去には行けない(時間の矢に関連し、この記事も参照)。このことから、太古の人類がどのようにお笑いを継承したのかは、今は明らかにはできない。しかしながら、フランス人のジャン=ジャック・アノー監督による映画「人類創生」を観ると、実は、映画ながらもお笑いが継承されていく様子がよく分かる。映画「人類創生」の原題は、「Quest for Fire」(フランス語でLa guerre du feu)で、太古の人類が如何に火を求めて苦労していたのかが描かれている作品ではあるが、お笑いの継承も含め、言語体系や時代考証もこの映画を作成した1981年当時の人類学の科学的な推測の下で作られているために、非常に優れた作品となっている。映画のため、事実のヒトの進化とは異なる点もあろうが、「こうしてお笑いが継承されたのかもしれない、なるほどねぇー」、とも思える映像がそこにある。



1) http://www.shockmd.com/2009/01/07/were-does-humor-and-laughter-reside-in-the-brain/ (閲覧2016.7.7)
2) Wild,B. et al.: Neural correlates of laughter and humour. Brain 126: 2121-2138, 2003.
3) エックルス, JC: 脳の進化. 東京大学出版. 1990.

From ここから。© 2015 This is 地底たる謎の研究室 version。