題名:マイクロチップ上のノイズは意識となりうるか?
報告者:ダレナン
本記事は、この記事の続きであることを、ここで前もってことわりたい
コンピューターとヒトの脳を明確に分けている理由の一つとして、マイクロチップなどにおける集積の規模や処理の速度の違いをこの記事で挙げた。また、その違いが少なくなった例として、IBMのスーパーコンピューターの「ディープブルー」が、1997年にチェスの王者であったゲイリー・カスパロフ氏に勝ったことも報告した。ここでは、その集積の規模や処理の速度の違いだけではないコンピューターとヒトの脳の違いについて論じたい。
コンピューターとヒトの脳は、この記事で述べたようにON or OFFの装置である。しかしながら、そのON or OFFにおける信号の流れの大きな違いとして、ヒトの脳はニューロンの繋がりにおいて生物的に冗長性があるが、コンピューターの人工ニューロンの結合は、機械的に頑強性があることになろう。その頑強性があるために、コンピューターはヒトの脳を超えることはできないと長らく指摘されていた。しかしながら、スタンフォード大学のアンドリュー・ニグ博士とGoogle社の開発によって進められた、ヒトの脳の階層性を模擬したDeep Learning手法と言われる人工知能の技術によって、それが打破された。この手法によって、人工ニューロンの結合は、柔軟性を持つこととなり、これがTechnological Singuralityを現実可能のものとした。しかしながら、柔軟性は有したが、ヒトが脳の活動の発端となる意識の座は、ヒトの脳でも明らかにされていない。そのため、この意識が今後の人工知能を有するコンピューター上でももたらされるかが、次の新たな疑問となる(この記事)。すなわち、
「Technological Singuralityを越えた時点で、人工知能は意識を獲得できるのか?」
その意識の座は、先の「ディープブルー」の例でもあったように、バグにもあるかも知れない。しかしながら、バグはコンピューターに特異な進化をもたらしたと言えども、それがコンピューターの意識化の元とはならないであろう。なぜなら、バクは処理の経過で変化させるのであって、それ自体でコンピューターが目覚める訳ではないからである。それでは、コンピューターの意識化は何によってもたらされるかと言うと、著者はノイズにきっかけがあると考えている。ケンブリッジ大学のダニエル・ウォルパート博士は、動作からの脳の存在理由を検討し、ヒトの柔軟で複雑な動きをもたらしているのは、実はノイズが根底にあることを説明している。すなわち、ヒトにとってノイズは有害ではなく、有益なのであり、これがヒトの冗長性となる2)。
現時点で、マイクロチップなどにノイズが混入すれば、明らかに誤動作となり、機械的にはストップすることは間違いない。しかしながら、マイクロチップ上でもしこのノイズがノイズでなく、何らかの信号として特別の認識ができるようになれば、それがコンピューターの意識化になるのかもしれない。無意識下のゆらぎ(ノイズ)は、ポテンシャルを別の次元へと躍進させる(この記事)。
1) http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38434 (閲覧2015.12.25)
2) https://www.ted.com/talks/daniel_wolpert_the_real_reason_for_brains?language=ja#t-200552 (閲覧2015.12.25)
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