題名:カタルーニャの奥深さを食材から探る
報告者:ナンカイン
カタルーニャを、語る~な、と言われても語りたくなる。それがカタルーニャの魅力である。
カタルーニャはスペインの北東部に位置し、ジローナ県、バルセロナ県、タラゴナ県、リュイダ県の4つの県で構成されている自治州である。地中海に面した沿岸地域、内陸地域、およびピレネー山脈に面した高山地域があるために、気候や風土の異なる自然環境が州内に存在する。そのため、地中海沿岸の海産物の食材だけでなく、内陸部や山岳部の肉や野菜も豊富で、様々な食材がある州である。また、歴史・文化的にもイスラム教徒、キリスト教徒と紆余曲折の交配もあり、それゆえに独自の文化が生み出されている。それは、カタロニア語という言語形態だけではなく、スペイン人やフランス人などの国籍以前に自分たちはカタローニャ人であると自負するカタローニャの人々の意識にも根付いている1)。
その独自の文化ゆえに、芸術に関しても著名人が多い。シュルレアリスムの画家として名高いサルバドール・ダリや抽象的な絵画で有名なジョアン・ミロもこの地に生まれた。また、世界遺産のサグラダ・ファミリアもカタルーニャのバルセロナにあるが、その建築家であるアントニ・ガウディもこの地の生まれである。なお、ガウディの建築については、鳥居2)による研究が当地でも有名であり、ガウディが手掛けたほとんどの建物について詳細に記されている。ガウディの建築好きなら目を通すべき書物であろう。
そのカタルーニャであるが、近年では、その独自性を取り戻す運動も高まり、スペインからの独立の流れもある3)。もともと独自の文化があった背景を考えると、それも頷ける話ではある。
一方、人の体は普段から摂取する食材からできている。そのため、どのような食材が料理として扱われていたのかを知ることは、その料理を生み出した民族性を知るきっかけともなる。そこで本記事ではカタローニャの食材を通して、カタローニャの奥深さに迫ることにした。
カタローニャの料理本として最も有名なのは、14世紀中頃に記述された「Libro de Sent Soví」になろう。原本はバルセロナ大学図書館にあるが、Rudolf Grewe氏によって現カタロニア語に解読されている。図にその本の表紙を示す。これによると、大麦のパン、玉ネギ、ニンニク、ベーコンがベースとなり、その他、魚、ウナギ、鶏肉、羊肉、豚肉、米、ホウレン草、グレープフルーツ、ナス、アーティチョーク、アスパラガス、ジャガイモ、エンドウ豆、トマト、キノコ、アーモンド、シナモン、クローブ、ナツメグ、ジンジャー、サフラン、ココア、バニラなどの材料が列挙されていたようである4, 5)。14世紀中頃に、すでにこのような豊富な食材が料理として利用されていたことに驚愕するとともに、カタローニャの奥深さをこれらからも感じられる。
図 「Libro de Sent Soví」4)
1) 田沢耕: 物語 カタルーニャの歴史. 中央公論新社. 2000.
2) 鳥居徳敏: ガウディの建築. 鹿島出版会. 1987.
3) http://www.asahi.com/topics/word/カタルーニャ州.html (閲覧2015.12.10)
4) http://ferransala.com/menjar-blanc-libre-de-sent-sovi-libre-de-coch/ (閲覧2015.12.10)
5) http://www.dvdediciones.com/barcino/librodesentsovi.html (閲覧2015.12.10)
From ここから。© 2015 This is 地底たる謎の研究室 version。