地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

うつろいやすい「愛」の概念の再考


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題名:うつろいやすい「愛」の概念の再考
報告者:ナンカイン

 本記事は、基本的にこの記事の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の記事にて、「愛」はヒト社会での共通の概念であっても、目に見えず、形がないために、うつろいやすい、と述べた。しかしながら、これが「愛」の最大の利点でもあるとした。これについて、本報告書で改めて検討したい。
 小野小町による恋歌に以下のようなものがある。

色見えてうつろふ物は世中の人の心の花にそ有ける

この歌に関して、色見えての「て」を「で」と読むことで解釈は異なるものの1)、「色見えて」を「人の心の花」にまで掛けて読み、その口語訳としては、「色が見えていて変るものは花ですが、色が見えないで変るものは、世の中の人の心という花であることです」が正しいとされる1)。すなわち、人の心の色は目に見えず、変わることが、常とされ、それは小野小町が存在した平安時代から何も変化していないことを示唆している。ゆえに、今でも小野小町の恋歌が通用する。
 一方、研究的観点からは、この恋歌のように古くから生活に深くかかわる「愛」、恋愛であっても、それに関するディスクール(discours:言説2))が十分とはいえず、研究対象としては重要視されていなかった3)。それに対して、谷本菜穂博士3)は、雑誌の記事を取り上げ、物語記号論の逆用から、記事の主題的モチーフを洗い出し、1980年~1994年に渡る雑誌記事内の恋愛諸相を分類し、図のようにまとめている。これを見て明らかだが、現代になるにつれて、①~⑥は増加したが、⑧~⑬は減少している。このことから、谷本博士3)は、享楽的側面を強調しながら延命工作を計り、結末を回避するといった現代的な恋愛の特徴を明らかにしている。すなわち、恋愛物語において、結婚につながる「恋愛」、失恋や別れをきちんと受け止める「恋愛」、そのような意味での近代的な「恋愛」の物語の消失を特徴づけ、ロマンティック・ラブ・イデオロギー(恋愛が結婚に結びつくべきという観念)の変化と、それによる「通過儀礼の



図 雑誌記事の主題的モチーフの分類3)

柔らかな拒否」を指摘している3)。筆者なりに拡大解釈をすれば、うつろいやすい「愛」の概念が、現代に至って、結末のない、より漠然とした様相を呈することとなった、ともできようか。よって、「愛」における色が、ますます透明度を増すとともに、「愛」とは何であるのかが、より不透明となった時代へと突入したことも暗示している。ただし、それは「愛」の根本(最大的利点)を見直すきっかけをも与えるかもしれない。

1) https://drive.google.com/file/d/0B7k_IWGPjLAUVUJqRVNIWTEyVFk/view (閲覧2018.2.20)
2) https://kotobank.jp/word/ディスクール-164129 (閲覧2018.2.20)
3) 谷本菜穂: 現代的恋愛の諸相 –雑誌の言説における社会的物語-. 社会学評論 49: 286-301, 1998.

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