題名:時間の遅れ現象への理解
報告者:ダレナン
地球上に暮らしているならば、ほぼほぼ知覚レベルとして時間変化はなく、時計の進み方も変わりない。そのため、時間は一定に流れていることで認識している。しかしながら、文献1), 2)にもあるように、地上からわずか33cmの高さでも時間の進み方が変わることが報告されている。その実験の結果では、低い位置にある時計のほうが、持ち上げられた時計よりも時間の進み方が遅く、その遅れは、79年間で「1秒の900億分の1」程度であるとされるも2)、遅れることが確実に検証された。逆に言えば、高い位置にある時計の方が時間の進み方が早くなったともいえる。この時間の遅れは、Gravitational time dilation1)(重力による時間の遅れ)に基づく。文献1)で示された図でこれの現象を表すと、図のようになる。一方、ここの記事でも示したように、ローレンツ因子によって、物質の速度が光速に近づくほど時間の進み方は遅くなり、例えば、文献3)に記載してあるように、宇宙船が光速の90%の速度で航行している時、船外の静止している観測者が測定する時間として1年間は、宇宙船の中では時計の刻み幅は静止系の約0.44倍となり、宇宙船内の時計では、まだ0.44年しか経過していないこととなる。この時間の遅れは、Time dilation of moving particles3) (動く物体の時間の遅れ:単なる時間の遅れともされる)に基づく。この時間の遅れで生じる状態は、お伽噺である「うらしまたろう」において、その浦島太郎が竜宮城に行って過ごした数日間に、地上では何百年という時間が過ぎていたという話になぞり、俗称で「ウラシマ効果」とも呼ばれる3)。このようにして、時間の遅れ現象は、2つの状況下で起こることとなる。
図 Gravitational time dilation at the scale of daily life1)
ここで、Time dilationはまだ理解しやすいも、Gravitational time dilationに関しては理解しにくい。なぜなら、この時間の遅れに関わるのは、「力」ではなく、「エネルギー」、すなわち重力ポテンシャルによるからである。この辺の誤解については、文献4)に詳しく記載してあるので、参照していただきたいが、それを抜粋すると、重力場による赤方偏移がGravitational time dilationに当たり、日常レベルで捉えると、1階から見ると屋上の時計は速く進むとなる。これは文献1)の33cmの高さと基本的には同じ理屈である。
謝った例のような気もするが、両方の時間の遅れ現象について理解しやすく、批判を恐れずここで説明すると、「ビルの最上階で椅子にふんぞり返って動かずに命令だけしている社長は、時間の進みが速く、地上で光速に負けじと奮闘し走っている社長の方は、時間の進みが遅く、結局は、地上で頑張っている社長は、時間の進みに沿うように若々しく見える」ともいえるのかもしれない。
1) Chou, CW., et al.: Optical Clocks and Relativity. Science 24: 1630-1633, 2010.
2) https://wired.jp/2010/09/28/相対性理論「時間の遅れ」、日常世界で実証/ (閲覧2018.10.24)
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/時間の遅れ (閲覧2018.10.24)
4) 遠藤龍介: よく見る相対論の誤解. 東北物理教育 26: 2-9, 2017.
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