地底たる謎の研究室

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夢世界がもたらす自我形成と現実への影響


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題名:夢世界がもたらす自我形成と現実への影響
報告者:ダレナン

 本記事は、基本的にこの記事の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 夢に関して進化心理学、あるいは、現象学をきっかけに、夢の本質に迫ろうとする心理学者の渡辺恒夫博士1)によれば、「夢世界の時間構造には、仮定法未来という次元がない」とされる。ここで、仮定法未来とは英語では、If + 主語 + should + 動詞の原形~、あるいは、If + 主語 + were to + 動詞の原形~となり、日本語で訳すと、万が一~なら、…だろう、となる用法である。ただし、日本語と違って、英語ではその仮定が区分され、実現する可能性が低いことを仮定する場合、「should」を使い、実現する可能性が極めて低い場合や、十分に実現する可能性がある場合までのさまざまな段階の仮定を表す際には、「were to」を使う。この仮定法未来が、夢世界の次元ではないということは、夢世界には「万が一~なら、…だろう」がないこととなり、実現する可能性の高い低いは、存在しないこととなる。すなわち、現在として知覚され体験される夢世界は、言い換えるならば、偶然はなく、必然であり、起こり得るべく起こる世界となる。
 渡辺博士1)はその夢世界の構造について、次のように考察している。「現実世界では知覚の独裁体制の元に、予期・想起等の様々な意識作用が整然と構造化されているのに対して、夢世界では独裁体制が崩壊し、多様な意識作用が現実感を競い合う無政府状態にある」1)から部分的に筆者が改訂。そして、現実の体験世界の時間的構造として、次の図を提示している。この図と、先の記事の筆者による図を比べると、非常に類似した図となっていることに気づく。これは偶然ではなく、先の記事を記述した後に調べた結果としての必然でもあろう。渡辺博士1)による自我の部分を筆者の夢世界と置き換えると、自我はまさしく夢世界そのものとなることが示唆される。未来への予期、現在の知覚、そして、過去の想起は、ともに夢世界の中に含まれ、それらが自我として働く。



図 現実の体験世界の時間的構造1)

 進化心理学的な観点から夢世界を論じると、フィンランドの心理学者であるAntti Revonsuo博士3)によれば、過去の夢世界における研究の欠点として、人間の認知的アーキテクチャに類して、夢の脳は進化の歴史を持ち、その歴史が何であるかを理解することなく、脳が夢を見るときに何をしようとしているのかを理解することは、困難であることを指摘している。さらに、人間の祖先の環境下における脅威の知覚と回避技能の絶え間ない夜間リハーサルとして、夢世界があったことを論じている。渡辺博士4)によれば、その論点は、進化的適応環境である狩猟採取の石器時代に、個体の適応率(=生存率×繁殖率)を高めるものであり、夢は脅威のシミュレーション機構として、今でも私たちの中で毎夜、作動していることを伝えている。そのため、夢を産出するシミュレーション機構として、最近の出来事と記憶の中から、使える材料は手当たり次第に利用し、それゆえに多様な夢世界がもたらされている可能性をも伝えている。
 したがって、よいわるいは是非として、夢世界は自我を形成するとともに、現実への脅威ともなる。

1) 渡辺恒夫: 夢科学の哲学Ⅱ: 夢の現象学. 科学基礎論学会 総会と講演会, 2011.
2) https://eikaiwa-highway.com/subjunctive-future/ (閲覧2018.11.6)
3) Revonsuo A: The reinterpretation of dreams: an evolutionary hypothesis of the function of dreaming. Behav Brain Sci 23: 877-901, 2000.
4) 渡辺恒夫: 夢科学の哲学Ⅰ: 夢の進化理論. 科学基礎論学会 総会と講演会, 2010.

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