題名:ダオッコ博士に
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
キーコがこの世を去ってから、月の世界を去ってから、彼女はどこに行ったのか未だに分からなかった。月の世界のどこか遠くにまで闇の中、独りで足を運んで、そこで制服(宇宙服)を脱いだのかもしれない。そうだとすると、もはや生命の維持はできなくなる。そこでの肢体からは、やがて月の嵐に運ばれ、宇宙空間の遠くの、遠くにまで運ばれているとすれば、もはや捜索は不可能に近い。
でも、キーコは見つからないままであっても、僕の中の記憶はどんどんとキーコの事を掘り下げるように、キーコの仕草や愛おしさが蘇っていた。単純な、その時は気にはしていなかったかすかなことも、今となってはまざまざと思い浮かべられる。Moon Townにあるわずかばかりの樹の中を歩いた時の手のぬくもりや、月の砂の海の中、二人で過ごした時間。そうして、僕たちが運命的に結ばれたきっかけ。今思えば、記憶というよりも頭の中に今でも僕の中のキーコが生きているかのように、僕は、そのイメージを、何度も反芻できた。
僕は色々なことを覚えている。忘れてはいない。
それは、キーコへの想い。きっとそうだ。
Moon Town宇宙科学研究所に着いた。受付に、ダン・ダオッコ博士とアポイントメントをとってあることを伝えた。
受付係:「少々、お待ちくださいね」
受付係の人は、とても丁寧に優しく僕にそのことを伝えると、インタフォン越しからダオッコ博士に連絡をし、話をしていた。しばらくすると、
受付係:「もうしばらくお待ちくださいね。もし、よければそちらのソファーにお掛けしてお待ちして頂ければと思います。よろしくお願いしますね」
そうして数分間待っていると、ダオッコ博士が現れた。白衣がさらに白く光って輝いていた。相変わらずとてもきれいな人だった。
ダオッコ博士:「お久しぶりですね。ツキオさん。お元気そうね。ところで、どういう要件ですか?」
ツキオ:「僕の恋人のキーコの件でちょっと複雑な相談があり、ここに来ました」
ダオッコ博士:「それじゃぁ、わたくしの研究室で詳しくお話を聞くことにしましょうか。それでいい?」
ツキオ:「よろしくお願いします」
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