題名:軍の命令
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
人をかばうことが無駄骨な部署だった。毎月毎月、誰かが倒れ、そして補充される。生き残った者のみに勝利があり、勲章がある。今や勲章のあるサメジマさんと言えども、心の中では僕に対して本音では(働けよ、お前はよー)だろうことも予想できた。誰もが倒れた僕に視線が冷たかった。そう、誰かが倒れれば、誰かがその仕事をカバーしなければいけない。かつての僕はそうだった。誰かの損失のカバーをしていた。でも、今や自分自身がカバーできなかった。リ・カバリーできなかった。
戦場で銃に打たれたものは生きるか、死ぬかしか選択がない。それが軍の命令。
ころしゅて、ぼきゅは、ぐんじんになっちゃんだ。
ソファーから起き上がり、会社のエレベータまで向かった。1Fのボタンを押し、フロアまで下った。いつもよりも、やけにその時間が長いように感じた。
フロアに着き、正面まで歩いていると、クミちゃんの代わりの受付の子が「タケヒサさん、どうしました?」と心配そうに僕を見ている。「いや、何でもない。かなり疲れているみたいなんだ。今日はどうしても仕事にならないから、帰ることにしたんだ」、「そうなんですね」、「そうだ、君にお願いがある。もし、クミちゃんが明日以降に受付に戻ってきたら、僕に連絡をくれるよう伝えてくれないかな」と、彼女に僕の連絡先を渡した。彼女は特に疑うことなく、「いいわよ」と答えた。だから、僕は素直に「ありがとう」と答えた。
これで僕はまだ世界とのつながりが持てる。そう実感した。
地下鉄のホームまで歩いてくると、なんだかとてつもなく気分が悪くなった。胸にも何かがこみあげてくる。僕は急いでトイレに駆け込んだ。すぐさま、ドアに鍵をかけ、便器に頭を突っ込むと、おえっ、と吐いた。今朝何も食べていない。だから、何も吐くものはなかった。でも、おえっ、おえっ、と次から次へと何かが込み上げてきた。涙が出た。涙が止まらなかった。その時、頭の中のスイッチがパチンと切れる音がした。僕の何かがOFFになった。周りの世界が急に色あせて見えた。
その後、どうやって帰ったのか覚えていない。気づくと僕は自宅のベッドの上でスーツ姿のままで寝ていた。
しじゅこしゃんは、ぼきゅが、ころしゅたんだ。
ばきゅんと、ころしゅたんだ。
僕が殺してしまったんじゃないか?
くみしゃんも、ぼきゅが、ころしゅたんだ。
ばきゅんと、ころしゅたんだ。
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