地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

思考が閉ざされた



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:思考が閉ざされた
報告者:ダレナン

 本物語は、この物語の続きです。

 結局は彼女の迫力に押し切られ、なかばぼったくり、あるいはかつあげのようにその占い師に一万円を渡してヒヨコのおもちゃを買った。
 腹を押すたびにプピー、プピーと愉快なのか、それとも悲しいのか分からない鳴き声を発する。
 かつあげ…。
 かつあげ…。
 これって、かつあげじゃん…。
 そうだ、からあげ…。
 そうして、僕は再びスーパー買い忘れていたからあげを買いに戻った。そして、買い終えると、自転車にまたがり路地の奥を見た。さっきのその占い師の存在は、そこに跡形もなく消え去っていた。
 プピー。
 「でも、あの啖呵は何だったんだろうか? 確か彼女は「水蜜桃の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う」と言っていたな」
 気になりそのTANKAをスマホで検索してみた。検索した先にはこう書かれてあった。
 「残念ながら、この映画の主人公は”恋”をしていない。だから、官能シーンが度々出てくるけれど何だか、痛々しいだけで、心が揺さぶられない。予告編で出てきた数分のフランス映画のほうがドキドキ ハラハラ ドッキリしてしまう。」1)
 そうだな…。そう思えた。その観ましたは、TANKAを観ましたは、2006年12月11日付けのレビューであった。TANKAの劇場公開日は、2006年11月11日。そこで、この日付の前後を参考に、そのドキドキ ハラハラ ドッキリのフランス映画があるはず。こちらの方が俄然気になった。そこで、これも調べてみた2)。
 2つ該当した。一つは11月18日公開 /製作国:イギリス=アイルランド=フランス(2006年)の麦の穂をゆらす風、もう一つは11月4日公開 /製作国:ベルギー=フランス=イギリス(2004年)のエコール。どっちかに違いない。でも、たぶん後者だ。前者は06年度カンヌ映画祭パルムドール受賞作品だが、僕のカンではたぶん後者だ。そうしてピルスナーウルケルの缶を飲みながら、エコールがVODであるのかを検索した。
 なかった…。これで僕は思考が閉ざされた気がした。そして閉ざされた思考の中、棟方のように赤い水晶玉に映っていた人形を思い出した。そうだ、あれば首吊りの状態だ。首吊りの人形。その人形の顔が僕のようでもあり、妻のシズコのようでもあった。こうしちゃいられない。僕はすぐさま自転車を漕ぎ、家路に着いた。
 「おかえりなさい。随分と遅かったね…。マヨネーズあった?」
 シズコが心配そうに笑顔で迎えてくれた。「うん、濃いのあったよ」。僕は、ほっとして彼女にそう答えた。

1) https://blog.goo.ne.jp/happy-san_001/e/42f9ebbf5e0f07d7bdec0fd675fb5c54 (閲覧2021.2.5)
2) http://www.entermeitele.net/roadshow/calendar/?sort=0&pageno=1&m=11&openflg=0&y=2006 (閲覧2021.2.5)

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