題名:53-18-46
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
課金。それは金を課すこと。すなわち、貸すではなく、課すのだ。だから、二度と戻ってはこない。そんな金だった。(はてにゃん?)おりしも、金のことで思い出した。そうだ、金のこと、略して金こ。金庫の番号を知るために、祖母の部屋にやってきたはず。でも、あの絵がなかなか見つからない。それでもって、スピーカーからは音がせず、プレーヤーもなんだか内部のベルトが切れたようだった。ベルト交換すると1000円ほどだろうか、工賃を除けば。「現在、ベルトの在庫ありますので販売可能です。販売価格 9,900円(税込)となります」1)。9900円か…。このプレーヤーの内部の構造は、どんな感じだろうか…。
ふとわたしは好奇心に駆られて、THORENSの内部を思い切って確認することにした。スマホで検索すると、運よく解体新書2)を見つけることができた。それに基づいて、わたしは内部を確認した。
ターンテーブルを外した。そこにベルトが見え、小さな紙がどうやらベルトに巻き込まれていたようだった。ストップした原因はこれらしい。
その紙を取り除いた。その時だった。紙の表に、あの絵が出てきた。これは、Duchesse de Bourgogneのパッケージの絵、祖母トミヨが祖父ヤナチェクにもらったというあの大事な絵だ。
裏面を覗くと、איך האב דיר ליבと書かれてある。これは、イディッシュ語だ。その意味は、愛している、だった。つまりは、わたしが推測するに、この絵は祖父ヤナチェクが愛の告白として祖母トミヨに贈ったものに違いない…。そう確信した。そして、その絵の隅の方に番号が書かれてあった。
53-18-46
僕の直感が正しければ、これは間違いなく金庫の番号。番号を覚え、わたしは金庫に向かった。
ダイヤルに手をかけた。右に53を3回、左に18を2回、右に46を1回。かちゃり。開いた…。中には手紙の束が入っていた。祖父ヤナチェクから祖母トミヨにあてたものだった。そっと一番上の手紙をあけた。
愛するトミヨさんへ
トミヨさんがワルシャワを経ってから、日増しにナチスからの弾圧が強くなりました。トミヨさんはあの時反対しましたが、やっぱりあの時にトミヨさんとイサクを日本に帰してよかった、そう思えます。このままだと、僕もやがてSS(ナチス親衛隊)に囚われてしまうかもしれません。3人でよく行った市場(Hala Mirowska.)の、幸せを感じていたあの何気なかった日々が、今の僕の心にかけがえのない宝物となっています。…
図 Hala Mirowska.3)
1) https://justfriends.jp/blog/thorens-prestige (閲覧2021.3.24閲覧)
2) https://www.hifido.co.jp/merumaga/osu/190118/index.html (閲覧2021.3.24閲覧)
3) https://www.thefirstnews.com/article/photographer-lovingly-restores-photos-of-1930s-warsaw-and-the-results-are-stunning-10924 (閲覧2021.3.24閲覧)
From ここから。© 2015 This is 地底たる謎の研究室 version。