題名:何かを連想させた
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
しばらくの僕とリトルの生活は、特に波風もたたずに穏やかだった。本家があった元の土地の借地料で月々のアパート代も心配ない。アパートに越してから別荘が荒れ果ててないか心配だったものの、曾祖父からの付き合いのあるエザワさんが定期的に管理してくれているようで助かっていた。毎日のリトルとの生活は、別荘から比べると缶詰なアパート暮らしであったも、僕の心は大きく満たされつつあった。いなばうわーなリトルも、わがままネコにはならずに、僕になついた。
そのうち、さすがに「いなば キャットフード わがまま猫 ささみ入り かつお・まぐろ」ぐらいは自分の稼ぎで賄わないと、とふと思い始めた。それは、リトルとの安定した暮らしぶりの中で、さらに祖母の手料理でなくコンビニ弁当で日々過ごす僕は、見た目にも徐々に太りつつあったことにも原因があった。生まれてから二十数年近く、ろくに働いたことがなかった僕は、仕事なんかできるのだろうか。そうは思いつつも、アパートでずっと過ごしていると大家にも奇異にみられ、輪をかけて鏡に映る自らの姿が惨めに思え、ややげんなりした。ポストを見ると、スーパーのチラシのほかに求人情報が都合よくポストに紛れ込んでいる。何かの啓示かもしれない。そして、それを頼りに、僕は、職を見けることを決心した。
(リトルにはちゃんと稼いであげないといけない。それが同棲生活の責務だろうな…)
求人情報を見ると、いくつかは接客がメインだった。でも、自分の性格から接客は無理だった。そこで、経験・年齢を問わず、軽作業のみ、午前勤務または午後勤務のみでもOKという会社に目を付けた。この辺がいいかな、そう思いながら見ていると脇からリトルがすり寄ってきた。リトルは、
「にゃおーん」
とネコなで声で、とある会社の求人情報に手を伸ばしてきた。見ると、タイミングよくペット好きな人なら誰でもOK、と書かれてあった。しかも、2時間でもOK、とある。リトルはそのままひざ元でごろにゃんした。ここがいいのかい?とリトルに尋ねた。「にゃおーん」と返事した。
そこに決めた。
次の日に面接に言った。係員の人は「ペットは好きかい?」と聞いた。「ネコ、飼ってます」と答えた。「オスそれともメス?」と聞いた。「たぶんメスです」と答えた。係員の人はにやりと笑った。「じゃぁ、9時から11時までの2時間契約で大丈夫かい?」と聞いた。「大丈夫です」と答えた。仕事内容は、どうやらネコに食事を与えるだけのようだった。それなら、僕にもできる。リトルにしているのと同じだ。
勤務日そうそう、いろいろなネコへ食事を与えた。ネコの数は全部で20匹ぐらいだったろうか。その中でもボス格と思しきネコは、僕に何かを連想させた(図)。
図 連想1)
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