地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

すがたみせるのよ~と蘇ってくる



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:すがたみせるのよ~と蘇ってくる
報告者:ダレナン

 本物語は、この物語の続きです。

 その日から僕はアパートの部屋でひきこもるようになり、どこにも行かず時間をやり過ごした。祖母が亡くなった心の穴を埋めるように、新天地での僕にとって雪の女王でもあったリトルは、いけにえとなってもはやこの世にはいなくなった。土の中の穴の雪の女王しているのだろうか、彼女は…。(にゃおーん、ありのままの~すがたみせるのよ~)。アパートの窓からBy This Riverの埋めた地点を眺めても、蘇ってくるはずがなかった。たぶん、その墓標たる石は、1mmたりとも動いてはいない。遠目にもそれが察知できた。
 僕の心は、果てしない何もない空間で、ぼっち状態だった(図)。



図 © Jason M. Peterson1)

 ありのままレリゴーLet it go…、ネイティブが日常会話で使う「let it go」の意味は下記の3つ2)。
<1> 何もしない、放っておく
<2> 諦める、忘れる
<3> 売る
 冷蔵庫にあった数本のコカ・コーラで、僕は日々過ごした<1>。何も食べる気が起こらなかった。そして、4日ほど経ってから、僕は意を決して<2>を選び、アパートを引き払うことにした<3>。
 このままここにいてもリトルのことを想い出すだけだったからだ。
 そして別荘に戻ることもその時に決意した。
 別荘に戻ると、別荘を管理してくれていたエザワさんと偶然に出くわした。僕のあまりにもの変わりように見た瞬間びっくりしていたが、戻ることになった経緯を説明し、少しは理解してくれたようだった。「元気にやっているとばかり思っていましたが…。そんなことでくじけちゃだめよ」と念を押され、あとでうちの畑で採れたサツマイモを持ってくるから、それでも食べて元気を出しなさいとのお叱りを受けた。
 それからというもの、エザワさんは毎日のように焼イモをたっぷりと段ボールに入れて持ってきてくれた。どうやらよほど久しぶりに会った僕の状態に驚いたのだろうか。それを食べながら、僕は少しずつ元気を取り戻すことができた。イモと水があれば、人間はなんとか生きてゆけるらしい。

 あの時から何年か、いやすでに何十年かと行く年が経った。そして、その頃に大量にイモを食べたせいなのか、わたしはこの頃、体質的によく放屁することが多くなっていた。それもだんだんと臭くなっている。ただ、身の回りの機器も随分と発達し、わたしはもはやスマホが必需品となり、これさえあれば、買い物をわざわざ町まで出なくても過ごせる。スマウも買った。別荘にひきこもってもやっていける。そしてそのスマホでリトルの事を思い出しながら、何気に検索する子ネコの画像は、時折、わたしにRIDDLE(なぞかけ)of the Deadとして、依然として黄泉がえり、以前として読みかえし、わたしの意識の奥底にすがたみせるのよ~と蘇ってくるのだった。



1) https://www.pinterest.jp/pin/4925880830571354/ (閲覧2021.4.8)
2) https://eigobu.jp/magazine/let-it-go (閲覧2021.4.8)

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