題名:変化(へんげ)
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
窓の外から見える雲の祖母に向かって、(「僕はここに居る」よ)と呼びかけた。雲の顔のような部分がこちらを見たような気がした。そして、それはにっこり微笑んでいる。「ヤナチェクに逢わせてね」と。
「毛布、いかがですか」
窓の外を眺めている僕に向かって、CAさんは個人的な営業スマイルで僕に微笑みかけた。そのCAさんは手に大事そうに毛布を抱えている。「ありがとう」と伝え、僕は素直に毛布を受け取った。「よい旅になりますように」と彼女は返答してくれた。その後、彼女は「にゃおーん」と言った。それはほ・ん・と・うに彼女が言ったのか、それともそ・ら・み・みだったのか、正確には分からなかった。でも、ちゃんと僕の耳の奥には「にゃおーん」と木霊していた。
彼女は、再び個人的な営業スマイルで僕に微笑み、僕も彼女に応えるかのように微笑み返した。
受け取った毛布を膝から腰へと掛け、再び窓の外を眺めていた。その雲はすでにそこにはなかった。目を閉じて、僕はかつて祖母が部屋でよく聞いていた「Chopin Nocturne No. 20」のメロディを反芻した。Wladyslaw Szpilman。彼の演奏には、いろいろな想いが含まれていた。その後に、Vadim Chaimovichによる「Nocturne in E Minor, Op. Posth. 72, No. 1」が頭の中で鳴り響いた。それらのNocturnに合わせるかのように、時間的にも夜想曲として更けていった。
「ちみ、じかんがもどったにゃん」
そこには子ネコがいた。「君は誰なの…?」
「いやだにゃーん、わすてしまたかにゃん。ぼく、りどる。まっ、ちみがべつめい、なぞかけ(かり)とつけたけれどもにゃん。だから、(かり)なしにして、なぞかけとよんでもいいけれどもにゃんてー」
「君は、あの画像の”なぞかけ”なの?」
「そっ、そうだにゃん。でんりゅうすぴなーからちみがきえたときは、しょうじきさびしかったにゃん。また、あえるとおもってたけれども…。こうして、あえたにゃん。ちみが、ねてるからだけれども」
「寝てる?」
「いま、ひこうきないで、もうふかぶって、はなちょうちんじょうたいで、ねてるにゃん」
「鼻ちょうちん…、そうか…」
「おっ、いま、ちみのしこうがよめたにゃん。これでどう?」といって”なぞかけ”は見事に僕の思考を読み取って変化(へんげ)していた(図)。
図 変化(へんげ)1)
1) https://www.pinterest.jp/pin/56013589111044484/ (閲覧2021.5.14)
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