題名:中世ヨーロッパにおける学問分類について
報告者:ダレナン
現在の学問は、細かく分類され、それぞれに専門性があり、それによって各種の学びも多様化した。そのため、例えば大学であれば、その流れを受け、様々な学部も多くなった。ちなみに、日本に存在する学部数は、平成17年時点で200学部を超える1)。ただし、それらをすべて横断して学ぶとなると、現在ではほぼ実践することが難しいであろう。結局は、その専門分野しか目に映らない人が多くなることも予想される。そのため、専門性(局所)を高めつつも、大域を眺めることができる個々の素養も、これからは必要となる。その教育の一環として、リベラル・アーツがある。
東京工業大学の上田紀行博士によれば、リベラル・アーツとは、人間を自由にする技であり、中世ヨーロッパの学問分類、自由7科(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)に起源があり、自由人として生きるための学問であった2)。そのため、いわゆる専門バカではなく、真の教養を身に着け、多様性の理解2)へと門戸を開くことにもなる。詳しくは文献2)にあるので、興味のある方は見ていただきたい。そこには、リベラル・アーツの重要性が非常に分かりやすく記述されている。ただし、日本ではリベラル・アーツは教養教育と訳されることもあり、一般教養と同じように扱われ、誤解を招いていることも指摘されている3)。
中世ヨーロッパの学問分類の自由7科のうち、文法・修辞・弁証を合わせて言語系三科(Trivium)、算術・幾何・天文・音楽を合わせて数学系四科(Quadrivium)という。ここで、Triviumを3、Quadriviumを4としてピタゴラスの定理に従えば、図のようになる。これを見ると明らかだが、3 Trivium、4 Quadriviumによって、5 Sensesが得られる。すなわち、五感を通して、リベラル・アーツは、心への学問となる4)。
ここで注目したいのが、Quadriviumである。Triviumを人文系とすると、内容的にはQuadriviumは自然系に属する5)。算術、幾何は数学として位置づけるも、数学者が、天文学に熱中し、音楽に精通していることは、現在では少ないが、中世ヨーロッパではこれらすべてにわたって習熟している学者が多かったことが伺われる。そういう意味で問えば、先の5のSenseが研ぎ澄まされた学者も多かったのであろう。そして、それらによって当時は、Quadriviumの4つの要素、純粋な(算術的)、静止した(幾何学的な)、動く(天文学的)、そして適用された(音楽的)として形づくり、それらがリンクする学びとして6)、学問を磨いてきたことが推測される。
図 TriviumとQuadriviumおよびSenses4)
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/学部 (閲覧2018.10.5)
2) https://frompage.jp/ynp/liveralarts/ (閲覧2018.10.5)
3) 大西好宣: 米4大学におけるリベラルアーツ教育の現状と改革. JAILA Journal 4: 14-25, 2018.
4) https://www.matrixwissen.de/index.php?option=com_content&view=article&id=845:the-7-liberal-arts-trivium-quadrivium-and-logical-fallacies-en&catid=208&lang=en&Itemid=242&responsivizer_template=responsivizer (閲覧2018.10.5)
5) https://kotobank.jp/word/quadrivium-1246189 (閲覧2018.10.5)
6) Kline, M: Mathematics in Western Culture. Oxford University Press. 1953. (https://archive.org/details/MathematicsInWesternCulture/page/n161(閲覧2018.10.5))
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