地底たる謎の研究室

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マルメロの陽光を夢見て


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題名:マルメロの陽光を夢見て
報告者:エゲンスキー

 マルメロは中央アジア原産のバラ科マルメロ属の一種で、その果実はカリンとよく似ている。別名でセイヨウカリンと称されることから、カリンの一種として思われていることが多い1)。しかしながら、実際はカリンとは異なる。そのカリンは、同じバラ科ではあるが、カリン属に分類される2)。
 マルメロの果実が熟すると、明るい黄色の洋梨形となる。また、カリンと異なって細かな白い毛が果実の表面にあり、その果実に陽の光が当たると、きらきらと輝くことがある。そのため、沢山のマルメロの果実が木に生り、その枝の間に陽の光が降り注ぐと、とても美しい姿となる。図にマルメロの実を示す。その美しい姿から絵にもなりやすい。
 マルメロの絵を描く人で有名なのは、スペインの画家のアントニオ・ロペスになろう。彼の作品集にもマルメロの描画がある。
 アントニオ・ロペスは、リアリズム絵画を代表する画家であるが、対象物の内面までもを描くことができる画家でもあり、彼の絵画は観る者を圧倒する。また、アントニオ・ロペスがマルメロを描く様子は、ビクトル・エリセ監督によってマルメロの陽光という名で映画化されている。ただし、この映画はいわゆるエンタテイメントとしての映画と言うよりも、アントニオ・ロペスがマルメロという対象物を描く様子を、

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図 マルメロの果実

これまたビクトル・エリセがアントニオ・ロペスの対象物に対峙する様子のその内面を描いたような映画でもあり、アーチストたるビクトル・エリセが、アーチストたるアントニオ・ロペスを撮るといった作品になっている。その映画を観れば、マルメロの陽光は明らかに商業的な価値を狙った映画ではなく、個人的な価値を追求した映画であり、アントニオ・ロペスとビクトル・エリセが織りなす物語は、彼らの生き方そのものである。人生の豊かな時間の過ごし方をそこで教えてくれる。
 図のマルメロは、マルメロの苗から育てたものである。しかしながら、結実するまでに3年を要した。その3年には、現在の情報などに関するあらゆるものをただ狩るという思想ではなく、明らかにゆっくりと育てるという思想が存在した3)。アントニオ・ロペスや、ビクトル・エリセと同じとは言えないかもしれないが、マルメロの苗がやがて結実することを学んだ3年という育てた時間は、とても豊かな時間であり、今後も人生において大事になるに違いない。少なくとも、研究所の構成員の一人としても、研究所の思想もやがて結実するよう尽力したいと願う。

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/マルメロ (閲覧2015.11.27)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/カリン_(バラ科) (閲覧2015.11.27)
3) 松尾英輔、正山征洋: 植物の不思議パワーを探る. 九州大学出版会, 2002.

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