題名:神様からご先祖様への逆系譜
報告者:ナンカイン
神様といえば、信仰の対象であり、それを簡単に分類すると唯一神(一神教)と多数神(多神教)となる。世界各国には様々な神が存在するが1)、例えば、一神教の代表ではユダヤ教、キリスト教、イスラム教があり、その神は、ヤハウェやイエス・キリストなどとして存在する。正確には神ではないかもしれないが、仏教には仏陀などが存在する。日本には、古くからの神話として八百万の神が存在し、自然のもの全てには神が宿っているとする多神教でもある。
今の世の中は発展的な科学技術が台頭した。しかしながら、それでもなお神の存在は、いっこうに輝きが失われない。それは、その存在自体が人の心の本質でもあり、原始的な人類からの心の内部に表現された知性として芽生えた系譜でもあるからであろう。
人類が人として歩み始めた頃、人は神や霊を通して、その神の構造を表現してきた。この思考について中沢新一博士は、数学のトポロジー(位相幾何学)の原理を応用し、トーラス(幾何学における円周を回転して得られる回転面2))として表現している(図)。中沢博士によれば、一神教が種数1のトーラス(図下)であるのに対して、多神教は種数nのトーラス(図上)としてモデル化できる3)。そのトーラスの内部の穴は、「空虚な穴」として、ここに霊や精霊の実体が存在し、それは脳内に開かれた「超越性の領域」であることを示唆している3)。このトーラス構造の外部(他界、異界とも呼べる)と内部を出たり入ったり、行ったり来たりして、人類は内部の思考や感覚を他界領域に伸ばすことが出来た3)。その結果として人類は、「知性の知性(流動性知性)」とも呼べるようなこの「超越性の領域」を観察することができた3)。すなわち、脳組織の飛躍的な進化によって、ホモ・サピエンスの心には、「超越性の領域」が出現し、その心的活動を観察しながら、人類は直観で捉えたその領域の構造を表現することで3)、人になったといえる。
図 神教のトーラス構造3)
一方、真核生物の細胞内器官であるミトコンドリアのアミノ酸コード表は、種の多様性にも関わらず普遍的であり、それを遡ることで祖先の分岐点を探ることができる4)。そのため、人のDNAのミトコンドリアを逆に辿ると、その祖先に一人の女性が出現する。通称「ミトコンドリア・イブ」と呼ばれるその女性は、世界中の人類の共通のご先祖様でもあり、この女性の前後で、「知性の知性(流動性知性)」が産まれた可能性が高い。ただし、「知性の知性(流動性知性)」は物質ではないために、タイムマシンがない現在は、その痕跡は現在でも知ることは不可能である。しかしながら、「ミトコンドリア・イブ」が神様であったとの確証は得られないものの、この女性を境に、神様的な人が産まれたことは間違いないであろう。その人の神話が、今でも生きている神様として存在し、それは現在まで続いている人類の知性の痕跡でもある。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/神 (閲覧2018.3.12)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/トーラス(閲覧2018.3.12)
3) 中沢新一: 野生の科学. 講談社. 2012.
4) 長谷川政美: 増補 DNAからみた人類の起源と進化. 海鳴社. 1989.
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