地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

押し入れの肥やし



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:押し入れの肥やし
報告者:ダレナン

 本物語は、この物語の続きです。

 そうして我慢に我慢を重ね、お重となったところで、わたしは唐揚げ in Midnightはあきらめることにした。うな重もふと瞼に浮かんだが、代わりに、Round about Midnightでmidnightのひと時を過ごすことに決めた。それは、Miles Davisの最高のアルバムの一枚でもあった。

 マイルス・デイヴィス - トランペット
 ジョン・コルトレーン - テナー・サックス
 レッド・ガーランド - ピアノ
 ポール・チェンバース - ベース
 フィリー・ジョー・ジョーンズ - ドラム

 なんてすごい布陣1)なんだろうか。それは1956年に起きた奇跡でもある。
 充電も完了し、わたしはQiからスマホを持ち上げ、スマホ内のRound about Midnightを確認した。そして寝床から飛び出し、戸棚からBlue Moonを持ち出してソファーに座わった。手でこぎみよくBlue Moonの王冠を外した。
 ぷしゅ。あたり一帯にはじける音がした。それとともに、Blue Moonからはオレンジピール独特の香りもあたり一面に漂った。
 耳にヘッドフォンをして、わたしはプレイボタンを押した。正確には押すというよりも触れた、になる。スマホになってから、この辺の表現がややこしくなったことを、わたしは痛感していた。そしてヘッドフォンからRound about Midnightの1曲目、セロニアス・モンク作曲のラウンド・アバウト・ミッドナイトが流れ出た。最高にいかしてた。これがまさにCoolだ。そうして、出だしからむせび泣くMilesのミュートトランペット、その音が心地よく耳の中に鳴り響く。
 目を閉じるとMiles本人がトランペットを吹く姿も瞼に浮かんだ(図)。かっこいい。彼に憧れてわたしは以前、中古のトランペットを購入した。何件か回ってようやく手に入れた代物だった。メーカーはV.Bach。値段も意外と手ごろだった。Milesへのときめきに合わせて、もちろんミュートも手に入れた。練習した。しかし、マウスピースからなかなか音がでない。そうして、いつしか、わたしのトランペットは、押し入れの肥やしとなった。



図 Miles Davis, 19562)




1) https://ja.wikipedia.org/wiki/ラウンド・アバウト・ミッドナイト (閲覧2021.3.7)
2) https://www.pinterest.jp/pin/118360296444538503/ (閲覧2021.3.7)

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