地底たる謎の研究室

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ビックリ箱の力学的な検討



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:ビックリ箱の力学的な検討
報告者:ログ

 ビックリ箱は、その名の通り、ビックリさせるためにある箱である。蓋をあけるとプレゼントと思いきや、中からボヨヨ~ンと、何かが飛び出す。この記事にあったように、ピエロもあれば、ドラえもんにあるようにネズミもあれば、図のように変顔もある。ちなみに、このビックリ箱は、英語では、「Jack-in-the-box」と言う。そのJackとは、英国の14世紀に実在したSir John Schorneのことであり、民間伝承によると、彼はかつてバッキンガムシャーにある北マーストンの村を守るために、ブーツの中に悪魔を閉じ込めたとされ、このイメージが後のビックリ箱になったとされる2)。すなわち、初めは人を驚かすためにあった訳ではないようである。
 そのビックリ箱であるが、使用される材料は、箱、バネ、そして変顔などの物である。仕掛けとしては、非常に簡便であるが、力学的には高度な要素がある。そこで、本記事ではこれについて検討したい。
 まずバネについて、バネの力は、力学的に以下の式で表すことができる。

02317000540

図 変顔のビックリ箱1)

F = kx (1)
ここで、Fはバネによる力、kはバネ定数、xは変位である。これをフックの法則と言う。次に物そのものによる力であるが、物の重さをmとすると、物の重力は
F = mg (2)
となる。gは重力加速度である。一方、箱は側面の摩擦によって閉まっている。そこで、上蓋と下箱の閉まる際の側面からの力をNとすると、
F = μN (3)
となる。μ(ミュー)は摩擦係数である。これらが釣り合っている時に蓋が閉まって、変顔などの物が箱内に収納されている。すなわち、
μN = kx – mg (4)
の状態である。この(4)式は、バネが上に持ち上げる力から物が重力に引っ張られる力を引いた力と蓋の閉まる力が等しい時に、蓋が閉まっていることを意味する。蓋をあけると、(4)式の左辺が0になり、kxはmgよりも大きいため、ボヨヨ~ンと変顔が飛び出すことになる。飛び出した後は、物があるために、完全にバネは伸びきることなく(xがわずかの値で)、最終的にはkx = mgが成立する。詳細に計算すると、バネの質量なども影響するが、ここでは簡略化した。
 このようにして、世の中のあらゆる”もの”や”こと”は、数式によって置き換えることができる。いわゆる数学は、万物の法則たる所以である。例えば、「スパゲッティを食べるとき、決まってソースが飛ぶのはなぜか?」や、「鉛筆の芯はどこが折れやすいか?」や、「ビリヤードの手球はどこを突くべきか?」など、様々な日常の疑問を数学(物理)は解決してくれる3)。数学(物理)は、まさに知的エンタテイメントである(この記事も参照)。



1) http://cdn.amanaimages.com/cen3tzG4fTr7Gtw1PoeRer/02317000540.jpg (閲覧2016.3.8)
2) https://en.wikipedia.org/wiki/Jack-in-the-box (閲覧2016.3.8)
3) ウォーカー, ジャール: 犬も歩けば物理にあたる 解き明かされる日常の疑問. 慶応義塾大学出版会. 2014.

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