題名:温泉とコンセンサスを合わせた造語オンセンサスについて
報告者:ナンカイン
本記事は、この記事の続きです。
この記事にて世界の温泉のルーツが古代ローマにあることが理解できた。また、この記事にて日本の温泉の歴史とこれらの温泉地の在り方について問うことができた。ここでは、この記事での温泉の在り方、いわゆる「湯治」について理解を深めたい。
温泉の効用には疾患に対する「療養」、予防や健康増進の「保養」、そして疲労回復の「休養」としての利用形態がある1)。すなわち、心身の総合的調整作用となる1)。しかしながら、その漠然とした作用のため、科学的に検証することが難しい。温泉に伴う心身に影響を与える要素が多く、単純に入浴したからうんぬんという訳にはいかない。手術や薬などとは異なって直接心身に作用を及ぼすのではなく、結局は対処的な作用となるからである。ただし、温泉に行った人で、旅館のサービス等が良くなかったという意見はあっても、温泉そのものが良くなかったという人は一人もいない。そこには、科学では検証しにくい真の温泉の効果があるからである。この真の効果が、「湯治」として繋がる。
その「湯治」としての温泉の効果は何も人間ばかりのものではない。世界でも有名となった長野県の「地獄谷野猿公苑」にいる猿をみればそれが一目瞭然である。図に「地獄谷野猿公苑」での温泉に入る猿を示す。実はこれは昔からのそこにいた猿のならわしではなく、ある時に温泉につかった一匹の猿の行動が、その他の多くの猿に伝播した行動パターンであることが知られている。宮崎県の幸島にいる猿のイモ洗いの文化継承2)もこれと同じである。このイモ洗いの文化継承は100匹を超えて莫大に他の猿にも伝播したことが知られているが4)、「地獄谷野猿公苑」の猿も、ある匹数を境に次から次へと温泉に入りに来たに違いない(ただし、残念なことに実際には100匹目の猿現象はなかったことが後日の調べで判明したので追記したい5))。「地獄谷野猿公苑」温泉には、むろん豪華な旅館も食事もない。
図 温泉に入る猿3)
しかしながら、温泉に入りたいと願う彼ら(猿)の気持ちは、誰もが理解できる。意見の一致や合意を英語ではコンセンサスというが、温泉+コンセンサスで皆が知る(猿も知る)温泉の理解は、オンセンサスと言えるかもしれない。しかしながら、人間が温泉地に行く本来の目的は、残念ながら今では猿の方が良く知っているようである。図を見て分かるが、彼ら(猿)は「湯治」の温泉文化を楽しんでいるようである。
1) 日本温泉文化研究会: 温泉をよむ. 講談社. 2011.
2) http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/stations/koshima_st/ (閲覧2016.1.15)
3) http://guide.travel.co.jp/article/7653/ (閲覧2016.1.15)
4) 船井幸雄:「百匹目の猿現象」を起こそう!. サンマーク出版. 2006.
5) http://www.nazotoki.com/hundredth_monkey.html (閲覧2016.11.18)
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