題名:チンパンジーの社会構造 -ジャングル地帯株式会社的な組織構図-
報告者:ナンカイン
本記事は、この記事の続きです。
先の記事でヒト社会における承認欲求の例として、ソーシャルネットサービス(SNS)の「いいね」を挙げ、その承認欲求の高まりが公と私との境界を崩壊させ、私が公に流れ出すことによる羞恥心が公として承認欲求に呑まれる可能性を示した。さらに、私が明らかでないチンパンジーは、私が公に媚びない社会性を保っていることを述べた。ここでは、チンパンジーの社会構造を詳細に調べることで、ヒトとは異なるチンパンジーの社会性に迫りたい。
チンパンジーの社会構造は、サル学の権威者の一人でもある西田利貞博士1)によれば、離散集合しながら一見すると群れがなく、すべてのチンパンジーとのつき合いがあるとされる。しかしながら、注意深い観察によって群れはあることが確認されたが、基本的には個人が自由に生き、いわゆる統制がない1)。ただし、順位の上下関係はあり、その関係を調整する行動として、相当に挨拶行動が発達している1)。一方で、ヒト社会の特徴でもある家族やその前段階的な構造もないことも確認されており1)、この辺はヒト社会とは大きく異なる構造を有する。このような社会構造から、ティム・バートン監督による映画「Planet of the Apes」に出てきたチンパンジーのペリクリーズ2)(図)のように親指を立て、「いいね」をする必要も特になく、現在のチンパンジーの世界では、社会構造上ではありえない承認欲求である。まさに、私が公に媚びない、個人の、自由な、社会性をチンパンジーは保っている。むろん、ボスによる支配もない1)。
これからすると、実に平和的な、素晴らしいチンパンジー社会であると思える。しかしながら、ヒト社会と同じくメスに対する権力闘争もあり、順位の高いアルファメイルといわれるオスは、発情メスとの交尾機会も多くなるため、その座を巡って毛づくろいしたり、協同作戦もとることがある1)。
図 チンパンジーのペリクリーズ3)
そのメスをめぐる抗争は、ヒト社会にも似たような様相があり、多々観察されるも、チンパンジーの方が、その状況がヒトよりも露骨とされる1)。すなわち、チンパンジーの社会には、明確な私がないことから媚びないものの、私のない公は、ヒト社会よりも随分とジャングル地帯株式会社的な組織構図、いわば統制のない公に縛られているのかもしれない。
こうしてみると、公と私の明確な境界がないチンパンジー社会もなかなか大変そうである。ここで、本記事の日付が11/7(元の報告は2017年11月7日に投稿)で、「いいな」であることに偶然気づいた。あくまでも偶然の「いいな」である(としたい)。
1) 立花隆: サル学の現在. 平凡社, 東京, 1991. pp109-144 (西田利貞: チンパンジーにおける社会構造の発見)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/PLANET_OF_THE_APES/猿の惑星 (閲覧2017.11.7)
3) http://planetoftheapes.wikia.com/wiki/File:Pericles.jpg (閲覧2017.11.7)
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