地底たる謎の研究室

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アインシュテルツェンデ・ノイバウテンの音楽性を問う



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:アインシュテルツェンデ・ノイバウテンの音楽性を問う
報告者:ゴンベ

 アインシュテルツェンデ・ノイバウテンというと何やらすごい名前であるが、表題にもあるようにその音楽性を問うことから、音楽アーチストの名前であることは、うすうす理解できるかもしれない。さらに、ツェンデ、バウテンという語の響きから、もしかしてドイツ語では、と思われた方もいるかもしれない。カタカナではなく、正式にアインシュテルツェンデ・ノイバウテンを表記すると、Einstürzende Neubautenとなり、その訳は「崩壊する新建築」となる。まさに、ドイツ語らしい響きをもつドイツ語である。さらに、新建築なのに、崩壊するとの相反する意味合いもあるように、音楽性は複雑であり、インダストリアル・ノイズ・ミュージックといわれるジャンルに属する。実態は、ドイツベルリン出身のブリクサ・バーゲルト(Blixa Bargeld)氏をリーダー兼ボーカル、そして、創立メンバーとするバンドで、1980年から活動している1)。
 インダストリアルであることから、一般的な楽器以外に、スクラップの金属片や建設用機材も楽器として用い、ノイズであることから、時には工業的な雑音も音として用いる。このことから、通常の音楽形態ではなく、一部の人が知る音楽性でもある。時には、メロディなぞあまりない曲もある。ゆえに、アンダーグラウンドな存在である。アルバム名も、ファーストの「Kollaps(崩壊)」を始めとして、セカンドの「患者O.T.のスケッチ」、サードの「半分人間」と、非常にアンダーグラウンドなタイトルである。図にファーストアルバムのジャケットを示す。一見するとジャケットの絵は落書きのようにも思える。時には水木しげる氏の墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)に登場する目玉おやじのようにも感じる。しかしながら、これはれっきとしたアートである。セカンドアルバムのタイトルに患者O.T.とあるが、これがヒントでもあり、O.T.とはアーチストOswald Tschirtner(オスワルド・ツチルトナー)氏のことを指す。そのオスワルド・ツチルトナー氏の手によるアートの一つが、これである。なぜO.T.に患者とついているのかと問えば、実はオスワルド・ツチルトナー氏は、統合失調症を患っていた方であるためである。その氏の系譜や、アート的な視点については別途の報告を期待したいが、ことアートという観点で見ると、そのような疾患うんぬんなどはまったく意味がなさなくなる良い例でもあろう。



図 「Kollaps」のジャケット2)

 このようにアルバムの絵については、一見すると落書きのようであってもオスワルド・ツチルトナー氏によるアートである。そして、そこに示されるアインシュテルツェンデ・ノイバウテンの音楽性も、インダストリアルで、ノイズであることから、一聴して理解に苦しむも、アートであることには間違いない。しかしながら、その音楽性の難解さから、アインシュテルツェンデ・ノイバウテンを聞くと、”音楽”ではなく、”音が苦”にもなる人も多いかもしれない。ただし、音も絵も、そこには何かを表現しようとするアーチストとしての魂があることにはやはり変わりはない。正直にいえば、未だに筆者も完全にその音楽性を理解したとはいえないが、なぜかアインシュテルツェンデ・ノイバウテンには琴線に触れるものがある。そこには、表現する・したい、理解されなくとも、伝えたい、そんな崩れつつ再構築されるアート(崩壊する新建築の表現)なる原初的な魂が存在するからであろうか。





1) https://ja.wikipedia.org/wiki/アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン (閲覧2018.3.5)
2) https://www.discogs.com/Einst%C3%BCrzende-Neubauten-Kollaps/master/7313 (閲覧2018.3.5)

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