地底たる謎の研究室

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脳の帯状束への電気刺激による「笑い」の誘発


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題名:脳の帯状束への電気刺激による「笑い」の誘発
報告者:ムトウ

 以前からてんかん者において「笑い」という特有の症状があることが指摘されてきた。そのため、てんかん者における脳の活動を調べることで、その「笑い」の座が判明することも期待されていた。奈良県立大学の星田徹博士ら1)は、難治てんかん者の病態を調べる目的に、焦点を示す発作症状(笑い発作、激しい身振り自動症など)に関して、頭蓋内電極の記録から、正確なてんかんの焦点を同定してきた。そして、それまでに至る研究過程において、「笑い」の表情には、少なくとも島皮質と帯状束(島皮質(insular cortex)と帯状束(cingulate gyrus)の脳内における部位を図に示す)の興奮が関与していることも突き止めている2)。しかしながら、その部位における「笑い」の機能は、表情形成に関わる興奮起始部か、それとも単なる中継点であるかが、明確には示すことができなかった3)。さらに、「笑い」には顔面の運動の、英語で言うところの「laughter」と、陽気な・幸せな気分を有する、英語で言うところの「mirth」の2つの違いが存在するため、これらを区別するメカニズムに関しても、文献3)では、その限界を示している。



図 島皮質(insular cortex)と帯状束(cingulate gyrus)の脳内における部位2)

 一方、ヒトの心の進化において、お笑いは重要であることが、ここの記事でも示され、この記事でも脳内における「笑い」のネットワークについて検討されている。しかしながら、その記事における脳内のネットワーク経路と、星田徹博士らが指摘する「笑い」の部位とは若干異なる。そのため、それ以後の研究も望まれていた。
 近年、アメリカ・エモリー大学の脳神経外科を専門とするKelly R. Bijanki博士ら4)の研究によると、覚醒状態での開頭手術において、帯状束への電気刺激を与えたところ、「笑い」と「リラックスした感情」が誘発され、手術中の患者の不安を軽減することが可能であったことが報告された。覚醒状態で開頭手術を行うのは、重要な脳機能を損傷しないようにすることが目的であるが、この刺激によって手術中のパニックに陥る可能性を避けることができたことが示されている5), 6)。そのことから、博士らは、脳腫瘍の外科手術やてんかん者、あるいは、うつ病者に対して潜在的にこの帯状束刺激が適用できるのではないかと示唆している5)-7)。

1) 星田徹、榊寿右: てんかんの的確な診断. 脳神経外科ジャーナル 12: 419-429, 2003.
2) https://neupsykey.com/the-organization-of-the-central-nervous-system/ (閲覧2019.2.6)
3) 星田徹, 榊寿右:「笑い」のメカニズム. 認知神経科学 3:178-183, 2002.
4) Bijanki KR, et al.: Cingulum stimulation enhances positive affect and anxiolysis to facilitate awake craniotomy. J Clin Invest. doi: 10.1172/JCI120110. 2018.
5) https://gigazine.net/news/20190206-electrical-stimulation-cingulum-laughter-anxiolysis/ (閲覧2019.2.6)
6) https://neurosciencenews.com/laughter-brain-surgery-10687/(閲覧2019.2.6)
7) https://www.sciencedaily.com/releases/2019/02/190204170932.htm(閲覧2019.2.6)

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