地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

ウミネコ・ダンス、カモーン。と、なって



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:ウミネコ・ダンス、カモーン。と、なって
報告者:ダレナン

 本記事は、この記事の続きです。

 本当はもうすでに消えているのかもしれない。どのような時間を過ごそうとも、その時間はいつも一定に流れて、いつしか記憶をも洗い流す。タンスの奥にしまった記憶は、しまったことすらも記憶として流され、後で見返しても、タンスも消されている。今、消されたタンスの奥に何をしまったのかも思い出せない。確か、整理していたはずだが、その整理がつかないまま、整理していたことも忘れ、タンスは置き去りになる。はるかかなたの次元に追いやられたタンスは、宇宙を彷徨う。
 現代神経生物学では、記憶はおもに脳細胞間の連結部シナプスに生じた物理化学的変化の集積として、脳の中に貯蔵されるとするも、哲学者のアンリ・ベルクソンによれば、記憶は脳の中に貯蔵されず、脳は記憶の媒介であって貯蔵庫ではないとする。脳=物質は表象を貯蔵できず、そもそも記憶が空間のどこかにあると考えること自体が、時間の空間化であり、誤りとして、時間=記憶はどこかにしまわれているという類のものではないとする1)。一方、記憶の消去の過程は、時間の経過にともなって起こる単なる忘却ではなく、積極的に生じる新記憶の形成過程であるともされる1)。
 タンスは、宇宙のどこに行ったのであろうか。
 ここで、気になることが浮上する。それは、文献1)の出版社にヒントがある。海・鳴・社。海で鳴く、これは、まさに、この記事のウミネコと繋がっている。宇宙に彷徨うタンスは、海で鳴くウミネコと同じ次元に位置している。
 そうして、色のない世界での、記憶もぶれがあっても、それが何であったのかをちゃんと認識できる(図)。あの時のウミネコは、間違いなく「ニャオーン」と鳴いていたのだ。タンスの奥で、羽ばたいているウミネコは、「ニャオーン」と鳴いていたのだ。
 ただし、ウミネコはそのあいまいな記憶でもって、自分の居場所を間違える。ここは、タンスだっけ、ここは、ダンスだっけ。そうだ、ダンスだ。ウミネコ・ダンス、カモーン。と、なって、タンスの奥で、ウミネコはダンスを踊る。その踊りは、RHYEのNeeded3)でも示されるように、Oh, I'll keep your dreams, babe, crashing, waste,4)にも似て、悲しみの中のタンスの奥の記憶のダンスなのだ。そこから、ウミネコ・ダンスによって新記憶の形成過程がもたらされる。



図 ニャオーン2)




1) 大谷悟: 心はどこまで脳にあるか. 海鳴社. 2008.
2) https://www.pinterest.jp/pin/730849845756814949/ (閲覧2019.5.11)
3) https://www.youtube.com/watch?v=n8woH4GxUMk (閲覧2019.5.11)
4) https://genius.com/Rhye-needed-lyrics (閲覧2019.5.11)



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