題名:データに付与する
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
ダオッコ博士:「ツキオくん、じゃぁ、そこに座って…」
ダン・ダオッコ博士の研究室に訪れたのは久しぶりだった。前回は、1年前ほどだったろうか。その時は、Moon人の捜査に関わるDNAの情報を得るために、同僚とここに訪れた記憶があった。初めてそこに訪れた時、あまりにもこの部屋に何もなかったのを覚えている。
そして、今もそうだった。部屋はダオッコ博士の澄んだ性格通り、きちんと整列していた。ダオッコ博士の机とイス、そして来客用のソファーが、本来置かれている場所にきちんと鎮座したまま。その他には部屋に何もない状態だった。すべて電子化された時代とは言え、過去をいつくしむように、数冊の地球で発行された本や、かつての地球の物品など数点は置かれている。それが他の、一般の、博士の部屋の中だった。でも、ダオッコ博士は、際立った究極のミニマリストなのだろうか、現実主義者なのだろうか、本当にここには何もない。
ダオッコ博士:「ツキオくん。そこに座ってもらえるかしら…」
僕がソファーに座った後、博士は僕との話を記録するために、手をかざしてエアーディスプレイを操作していた。そして、その一連の操作が終了すると、
ダオッコ博士:「じゃぁ、ツキオくん。そのキーコさんとの複雑な相談とやらを聞かせてもらいましょうか…」
そう、僕に告げた。
僕はキーコとの間にあった一連の出来事をかみ砕くように、ダオッコ博士に詳細に話をした。そして、僕自身が考えたニューAIに基づいたリアル3Dホログラフィによるキーコの蘇り、それについてダオッコ博士に提案した。
ダオッコ博士:「なるほど。そういうことね…。ちょっとツキオくんの手の内を見せてもらってもいいかしら」
僕は手を差し出し、ダオッコ博士はそれをスキャンした。
ダオッコ博士:「そうね。大体6,7割のデータはここに保管されているかな。これなら、肉体的なキーコさんの再現は案外、容易に可能かもしれない。でも、残り3割の情報がないとやっぱり、ただのデータ上のお遊び、いわゆる心の失われたキーコさんの存在になっちゃうけど、どうする?」
そこで僕は、僕の中の記憶を読み込んでもらい、それをキーコの肉体のデータに付与することをダオッコ博士に提案した。
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