地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

地球の飢餓を救え。



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:地球の飢餓を救え。
報告者:ダレナン

 本物語は、この物語の続きです。

 僕の方を振り向いた女性の顔に太陽の光がまぶしく差し込んだ。見えた顔にはモザイクもかかっていた。
 声は認識できた。鼻歌を歌っていたから、声はする。鼻歌でも分かるとても透明感のある透き通った声だった…「あっ、ダリオくん」。その彼女は、僕の変な名前も知っていた。でも、顔にはモザイク。誰だろうか。どことなく妻の声にも似ている。彼女は妻だろうか。モザイク越しでも、何だか違うような気もする。次第に彼女の鼻歌はモウ、ケッコ、モウ、ケッコとなり、またも場面は、ニワトリの軍隊に変わった。
「コッケ、コッ、コ、ゼンタイ、トマレッコ」
「ヒダリ、ムケッコ」
 すると、ニワトリが一斉に僕の方に向きなおした。
「カマエッコ」
 僕に銃を向ける。
「ウテッコ」
 ババババババキューン。
 ニワトリの獣から放たれた弾丸が次第にこっちに押し寄せてくる。でも、弾丸の進み方がとてもゆっくりしていた。僕は押し寄せる弾丸の列の隙間から、ニワトリの隊列の最後尾を確認した。くっくどぅーどるどぅも弾丸を放ったのか気になっていたからだ。彼も弾丸を放ったのだろうか…。しかし、くっくどぅーどるどぅはその隊列にはいなかった。なんだかほっとした。
 この弾丸の進み方だと、弾が僕に着弾するまで3分ほどかかる。場合によっては1分だ。お湯かけ3分、お鍋で1分。でも、僕はお湯かけを選んだ。だから、3分でいい。その間、お湯が沸くその間、ドンブリとドンブリの蓋を、そしてお箸を準備した。お盆も準備した。あと3分で着弾する。
 お湯が沸き、お湯を注いだ。今日はネギ入りだった。だから、お湯をかけた時もネギの香りがあたり一面に漂って、どどっどおおん、と、お腹も鳴った。
 元祖鶏ガラ チキンラーメン。すぐおいしい、すごくおいしい。地球の飢餓を救え。WFP 国連世界食糧計画。あれから3分経過。すべての弾が僕に着弾した。うっ…。
 こうして、僕の飢餓も救われた。
「えっ、それは、どういうことなの」
 顔にモザイクのかかったその女性は、僕に問いかけた。自転車はそこにはない。服も違う。またもや場面が変わっていた。でも、次第にモザイクが薄くなり、そこには妻の顔が見えた。
「実はチキンラーメンの賞味期限が切れていたんだ。だから、つい食べたんだ。僕のお腹も飢餓状態だったし」
「ふ~ん。そうなの」
「そうなんだ」
「わたしには一口くれないのね?」
「もう、食べ終わった」
「ふ~ん」

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