地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

「プチポリ納豆スナック」の粒



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:「プチポリ納豆スナック」の粒
報告者:ダレナン

 本物語は、この物語の続きです。

 CPUのSnapdragonからは、耳に響くように、かちかち音が鳴り響いていた。それはスマホ内部なのからなのか、それとも自分の頭の内部なのからなのか分からなかった。時折、ぶーんとなる抵抗の音と、コンデンサーからさわさわとなる音と重なり合い、CPUのSnapdragonは、Snapのようにパッと現れては消えるDragonが飛翔しているような幻覚さえ見えた。僕は今、クロック同期している。
「ちみは、ずいぶんと、とまどっているようだにゃん」
 子ネコのりどるは、そう僕に告げた。
 そうかもしれなかった。僕が見ていたのはただのPixelだったからだ。そこには何も生身の体はない。彼女の息遣いもまったくない。分解すれば、ただのPixel、0と1の世界だった。ほれたとしても、彼女の情報は、0と1でしか構成されていない。その0と1を拡張するように、僕の意識は色彩鮮やかにしているだけの、現実とは違う疑似的なカラーフィルターに踊らされ、惑わされているだけだった。
「まっ、そんなにしんこくにかんがえなくてもいいにゃん。ちみ、これ、たべる?」
 りどるは、僕の眼の前に「プチポリ納豆スナック」を差し出した。大豆イソフラボンで、ヘルシーおやつ95kcalと書いてある。おまけに、香り控えめ手につきにくく食べやすい、らしい。
 手を差し出すと、りどるは数粒、袋から「プチポリ納豆スナック」を僕に手に乗せた。小さい粒だった。幾分、普通の納豆よりも小粒に感じられた。
 そのまま、僕は「プチポリ納豆スナック」の粒を口に運び、咀嚼した。醤油の味が口に広がり、同時に、おやつと名をうっていても、通常にパックされ、売り出されている豆のような感触が、口の中に広がった。これは、スナックとなれども、その味や食感は糸引かない納豆そのものだった。
 「どう、うまいにゃん?」
 「美味しいです」
 その返答に、りどるは、満足そうに頷いていた。それとともに、僕の放心していた状態も少し落ち着いていた。これも「プチポリ納豆スナック」効果と言えるのかもしれなかった。

 「さっ、すまほないぶを、ぼうけんするにゃんか。そのうち、ちみにも、きっといいことあるにゃん…、なんかみつかるにゃん」
 その言葉を発したか否かの時に、子ネコのりどるは、その姿を一瞬、人型のNEXUSに変化(へんげ)し、Pixel化した。「わたしについてきてね…」(図)と。
 それを見て、りどるは僕の意識をPixel化する何か奇妙な能力、いや彼あるいは彼女は、アンドロイドだから僕の神経をスマホ内部でコントロールしている、そう感じざるを得なかった。



図 ついてきてね…1)



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