題名:写真における顔の傾きと脳のニューロンの方位選択性の関係
報告者:アダム&ナッシュ
人は美に対して限りない欲求がある。特に女性であれば、日々美しくなりたいと願い、あらゆる方法で美しさを磨きあげていることであろう。その美しさは、外面だけでなく、内面からによっても大いに磨かれるが(この記事を参照していただきたい)、外面や内面も含めた、ある一瞬の美しさを保つ方法の一つとして写真があろう。写真は、その人の後世への思い出ともなりうるために、その美しいと感じられる一瞬をより一層美しく残してほしいと願うのは、撮られる側として当然である。また、写真を撮る際のポージングは、その美しさを決める重要な要素でもある。
一方、人の脳は、顔に特別な関心を持っている1)。そのため、いわゆる絵画における肖像画には、脳がその見る側の過去の経験を通して、特定の特徴を特定の心的状態や心理的特徴と関連づける力を持っている1)。これと同じように、写真で言えば、ポートレイト写真にもその力があろう。その力を無意識に生じさせる一つの要素に、ポージングとしての顔の傾きがあり、顔の傾きでポートレイト写真の印象が大きく変化することは、誰もが理解していることである。その顔の傾きには、脳のニューロンの方位選択性が密に関係し、ニューロンは特定の傾きに対して反応しやすいことが発見されている2)。そのニューロンの方位選択性の反応を図1に示す。
図1 脳のニューロンの方位選択性の反応2)
図2 スカーレット・ヨハンソンさんの写真3)
このように90°で最も反応し、その前後30°までよく反応する。45°ではやや弱まり、180°で再び反応する。これに従えば、ポートレイト写真における顔の傾きは90°±30°がよいことが分かる。ネット上の正面からのポートレイト写真を調べても、この範囲に収まることが多いが、そこには顔の傾きに対する無意識の撮影テクニックが潜んでいることを示唆している。その写真の例を図2に示す。女優のスカーレット・ヨハンソンさんの写真であるが、これを見ても分かるように、顔の傾きは図1のニューロンの方位選択性の反応に対して逆らわない角度範囲に見事に収まっている。
1) ゼキ, セミール: 脳は美をいかに感じるか. 日本経済新聞社. 2002.
2) マルティネス=コンデ, S. マクニック, SL: ヒューベルが見抜いた視覚. 日経サイエンス. 8, 113-115, 2015.
3) http://www.wallpapermay.com/People/Actress/blondes_women_scarlett_johansson_actress_1920x1200_wallpaper_49106 (閲覧2016.1.28)
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