題名:肉かまぼこの実現と商品化
報告者:トンカツる
かまぼこは一般的には魚で作る。創業120年の老舗である吉開のかまぼこ店によれば、その方法は、新鮮な白身魚または青魚を使って、①下ごしらえ、②細かくする、③水に晒す、④水気を取る、⑤すり身にする、⑥味付け、⑦成形、⑧寝かせる(熟成)、⑨蒸す・焼く・揚げるの9つの工程となる1)。各工程におけるポイントは文献1)を参照していただくとして、このようにかまぼこのベースとなる材料は新鮮な魚である。一方、ソーセージに代表されるように、多くのソーセージは肉で出来ている。しかしながら、魚肉ソーセージも流通上でよく見かけ、魚肉ソーセージという名の通り魚のすり身が材料となる。すなわち、ことソーセージに関しては、肉であっても、魚肉であってもソーセージという括りでは違いがない。同じくして、かまぼこも現在は魚肉かまぼこが主体となるが、肉かまぼこも、商品として流通にあっても不思議はない。しかしながら、店頭でかまぼこというとほとんどが魚肉かまぼこである。肉かまぼこは見たことがない。そこで、本記事では肉かまぼこの存在を調べるとともに、どのようにして肉かまぼこを実現できるのかについて考えたい。
Googleにて肉かまぼこと検索すると、いまトピの肉かまぼこを作った人の報告2)がトップに位置する。大住有氏がその方であるが、氏によれば、「肉でカマボコ作ったら美味いんじゃね?」との疑問から肉かまぼこを作ったようである2)。材料は鶏肉で、その作り方は、通常の魚のかまぼことほぼ同じくして、①ミジン切り、②冷水にさらす、③練る、④味付け、⑤かまぼこ板に成型、⑥蒸す、⑦氷水で急冷する、である2)。出来上がりは図のようにキメが荒かったようであるが、味に関しては、「味は当然、鶏肉味なんですが、食感と見栄えのせいで、脳が勝手にカマボコ味に脳内変換する」2)とのことである。これは非常に興味深い意見である。少なくとも魚肉ソーセージについても、脳内でちゃんと肉のソーセージとして認識される。
図 大住氏による肉かまぼこ2)
食科学と食品の権威であるアメリカのHarold McGee氏によれば、魚肉と、いわゆる牛や豚などの肉の違いに関して、肉よりも魚肉は層状構造になっており、結合組織がまばらで弱いことが指摘されている3)。よくよく考えてみると、煮魚などの魚の肉はぽろぽろとはがれることが多いが、牛や豚などの肉は同じ時間煮てもそれが少ない。肉でそれがややあるとすれば、鶏肉は比較的そこに位置しているかもしれない。このことから、大住氏の鶏肉かまぼこは、肉かまぼこの第一弾として魚肉かまぼこに準ずる賢明な選択であったといえよう。
一方、台湾には、肉羹なる台湾風肉かまぼこなる食品があった4)。こちらは、豚挽き肉に魚をまぶしたものであるが、台湾で一般的な肉羹は、豚もも肉(赤身):豚脂身:魚漿(魚肉をすりつぶし、塩を加えたもの)=8:3:1で作る。そのことから、肉羹は、魚肉と肉のハイブリッドかまぼこと見なすこともできよう。しかしながら、牛や豚のみ、あるいは、その両者による純粋な肉かまぼこは、今回の調査上では商品としては見つけることができなかった。このことから、肉かまぼこの実現から商品化への夢は、今後新たな市場を開拓する魅惑的な商品となりうる可能性が秘められていることが示唆された。
1) http://www.yoshigai.co.jp/user_data/kamaboko.php (閲覧2016.12.20)
2) http://ima.goo.ne.jp/column/article/4035.html (閲覧2016.12.20)
3) McGee, H.: マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-. 共立出版. 2008.
4) http://tw-cai.blogspot.jp/2013/10/blog-post_4.html (閲覧2016.12.20)
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