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世界初のコンピューターの歴史を計算せよ –そのⅡ-



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:世界初のコンピューターの歴史を計算せよ –そのⅡ-
報告者:ダレナン

 本記事は、この記事の続きです。

 先の記事で、コンピューターの父とも呼ばれる天才科学者のジョン・フォン・ノイマンのコンピューター関連における歴史についてアメリカを中心に計算した。ここでは、イギリスを中心にその歴史を計算したい。
 イギリスではアラン・チューリングの存在を外すことができない。計算機科学分野においてチューリング賞があるように、チューリングは画期的な論文「On Computable Numbers, with an Application to the Entscheidungsproblem」1)を1936年に発表した。ちなみに、チューリング賞はコンピューター界のノーベル賞とも言われているが、残念なことに、ノーベル賞と異なり日本人の受賞者はまだいない2)。これから先に日本人からの受賞者が出るかの論争は、この先に残して置きたいものの、このチューリングが発表した論文で重要な点は、チューリング・マシンという仮想の計算機(コンピューター)にある。それは、図のような仕組みで説明される。マシン本体はある状態を持っていて、テープが動きつつ、ヘッドからルール表に従って、ある状態の読み書き(0 or 1)をテープにし、ある状態が停止するまで、これを繰り返す3)。簡単には、チューリング・マシンのこのような仕組みでもって、計算できることは全て計算される。
 チューリングが論文を発表した当時は、機械こそはまだ登場していなかったものの、チューリング・マシンはコンピューターの仕組みの先駆けとなった。先の記事にて、アタナソフ・ベリー・コンピューター(ABC)が完成したのは1939年であることから、仮想的には、チューリングがコンピューターの神様となるのであろう。その後は、映画「イミテーション・ゲーム」でも見られるが、チューリングはナチスに採用されたエニグマ暗号の解読としてBombeなる機械を開発し、第二次世界大戦における情報戦においてイギリスを勝利に導くきっかけを作った。



図 チューリング・マシン3)

 一方、アメリカのEDVACの開発から、さらに元を辿れば、1945年のジョン・フォン・ノイマンの論文に触発されて、1949年にケンブリッジ大学でEDVAC タイプの機械であるEDSAC (Electronic Delay Storage Automatic Calculator)を完成させている。EDVACの完成は1951年であったことから、EDSACの完成年である1949年からすれば、事実当時のイギリスの方がコンピューター大国でもあった。しかし、軍事機密的な流れから、その後はアメリカにコンピューター開発を先に越された形となった。
 先の記事のそのⅠと本記事のそのⅡから、世界初のコンピューターの歴史は、軍事関係に伴う人間模様によってもつれにもつれた。それを解こうにも、計算できないもつれが絡まりあい、ややこしい様相を呈している。映画「イミテーション・ゲーム」にもあるように、チューリングもやはりややこしい人間模様によって命を失っている。
 残念なことに、人間模様は現代でも計算できない。これが計算できれば、時代の先を読めるであろうが…。

1) http://www.cs.ox.ac.uk/activities/ieg/e-library/sources/tp2-ie.pdf (閲覧2017.4.18)
2) http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070918/282235/ (閲覧2017.4.18)
3) 高岡詠子: チューリング計算理論入門. 講談社. 2015.

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