題名:生体電気コードの解明
報告者:ムトウ
本記事は、この記事の続きです。
先の記事にてカエルの「電気的な顔」とされる生体を決定づける信号に関して報告し、電気的パターンとは、生命体の源となる可能性について検討した。ここでは、その研究の流れを追い、生体における電気コードとも称される存在1)について調べてみたい。
カエルの胚のある種の電気的パターンは、カエルの顔の特徴を形成することは、先の記事に示した通りであるが、この電気的パターンは、その後のタフツ大学の一連の研究からMichael Levin博士によって、生体の電気コードと名付けられることとなる。電気コードのコードとは、一般的なイメージとしてある線のことを示しているのではなく、プログラミングなどで使われるコーディングとの意味と同意のものである。すなわち、日本語で言えば、符号、記号、あるいは、暗号となる語である。このことから、生体電気コードは、”生体が有する電気的な符号”となる。この生体電気コードをうまく操作し、例えば、とある細胞に対して人為的に眼に特異的な電圧範囲に設定すると、普通の成長ではその組織には生じないはずの異常な場所に、眼が形成される現象が得られる2)。この現象から、Michael Levin博士ら2)は、生体電気コードに基づく生理学的特性が、結果として解剖学的なマッピングとなることを示唆している。言い換えれば、細胞に対する電位の変化は、遺伝子がどのように機能するかを制御するようなエピジェネティックスイッチ(遺伝子のスイッチをオンにしたりオフにしたりする仕組みのこと3))としても機能すると考えられている1)。ここで、遺伝子を分かりやすく電球に例え、図のような遺伝子的な電球の配列があるとする。2×5の行列の電球であるが、この行列のうち、2行の2列目に天才に関わる遺伝子の電球スイッチがあるとする。これに特異的なパターンで、ビビッと電気を与える。すると、ピカッと光る。すなわち、この遺伝子スイッチがOnとなったわけである。結果として、成長すると、天才になれるかも、という可能性も秘められている。今はまだ天才になれる電気的なパターンや遺伝子の特定は難しいものの、Michael Levin博士らによって腫瘍の発生を防ぐ生体電気コードが解明され1)、実に今後が頼もしい研究である。
図 遺伝子的な電球4)
1) https://www.scientificamerican.com/article/bioelectric-code/ (閲覧2017.8.25)
2) Tseng A, Levin M. Cracking the bioelectric code: Probing endogenous ionic controls of pattern formation. Communicative & Integrative Biology. 2013;6(1):e22595. doi:10.4161/cib.22595.
3) http://www.science-bookshelf.com/review/theme_guide-epigenetics/ (閲覧2017.8.25)
4) http://www.cihr-irsc.gc.ca/e/49154.html (閲覧2017.8.25)
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