地底たる謎の研究室

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ときめき過程における脳内表象の推測



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題名:ときめき過程における脳内表象の推測
報告者:ダレナン

 本記事は、この記事の続きです。

 先の記事にてロシアの写真家であるVladimir Arndt氏によるポートレイト写真を取り上げ、その写真からときめきの数式化が試みられた。ここでは、この記事で示したときめきにおける脳内の神経伝達物質のドーパミンがもたらした報酬系のA10神経の作用も踏まえ、ときめき過程における脳内表象を推測してみたい。
 A10神経が作用する一か所に記憶の所在である海馬がある。その海馬では、”期待する快楽”の対象として以前の経験における何らかの形で保存されているであろう”何となく好きなタイプのメモリー”がある。ただし、ときめきに関するそのメモリーはむろん自発的にリコールされることが多くなり、何となくであっても、海馬ではおのずと増強されうる。さらに、その何となく好きなタイプのメモリーが、その時に強烈な体験を伴っていた場合は、ささいなことであってもメモリーがタグづけされ、様々な状況と関連づけられやすい。これは「行動タグ」と呼ばれ、震災などに伴うささいな出来事をなぜか覚えているメモリー化と同じ現象となる1)。「失われた時を求めて」で著名なフランスの作家であるマルセル・プルーストの、匂いに基づいたメモリーのリコールとされる「プルーストの効果」もこれと同じ現象といえるであろう。「プルーストの効果」とは違い、ときめきは視覚からの映像に基づくが、メモリーが無意識にリコールでもって増強されている状況下で、視覚からのダイレクトに入ってくる刺激、すなわち、”目の前の好きなタイプ”が突如目の前に現れる。
 ここで、脳内表象について考えると、西本伸志博士2)によれば、ヒトの脳内では映像が意味空間表象としてクラスタ化されていることが示されている。すなわち、このクラスタ化によって映像を分類し、脳内でメモリーされる。しかしながら、ときめきでの状況は、その前後文脈とも伴い、”何となく好きなタイプのメモリー”は、特別にクラスタ化されているかもしれない。ここでは同じ図で示したものの、仮に、図の左のように”何となく好きなタイプのメモリー”の特別なクラスタがあったのであれば、その表象が、図の右の”目の前の好きなタイプ”でもって、ダイレクトにリコールされ、側坐核に”快楽”が生じ、その瞬時にA10神経においてドーパミンがsparkする。その結果として、海馬がすでに持っていた”期待する快楽”も、右図 = 左図となり、海馬も”快楽”となり、徐々に海馬の新たな”期待する快楽”となる過程で、ときめく。図のような日常の何でもない状況下で、ふと、ときめくのは、たぶんに脳内表象の特別なクラスタ化とも結論づけられるかもしれない。



図 ときめき過程における脳内表象3)を改図

1) 井ノ口馨: 記憶をつくり変える. 日経サイエンス. 11, 28-37, 2017.
2) 西本伸志: 映像知覚の脳内表象. 映像メディア学会誌 69: 498-50, 2015.
3) https://www.pexels.com/photo/woman-looking-at-camera-325531/ (閲覧2017.10.5)


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