題名:画家スティーブ・ハンクスに学ぶ絵画描写の極意
報告者:アダム&ナッシュ
世の中には多くの画家が存在するが、一般的に名前が知られるのは、ルネサンス時代のレオナルド・ダ・ビンチ以降に活躍した油彩画家か、クロード・モネ以降の印象派の画家が多いに違いない。やや近代の時代ならば、パブロ・ピカソのあたりになるであろうか。それ以外で、特に近年の画家は、SNS等で絵は見たことがあっても、その絵を描いた画家の存在は、絵を描く人以外はあまり知られていない。むろん歴史の重さから考えると、知られていないのは致し方ない事実ではある。表題の画家スティーブ・ハンクスもその一人であろう。
ふと、ある時に検索で引っかかる画像がある。そして、その画像を見た時に、なぜか印象に残り、その後にもう一度見たいと嘆願することもしばしばある。SNS等でシェアすれば、その情報は保存されるも、その偶然に魅せられた画像が絵画で、しかも、シェアし忘れ、しかも、その絵画の画家の名前が分からないとなれば、インターネット上のコンテンツが数多くひしめく現在では、二度と出会わない画像として、やがて多くのコンテンツの中で埋没することとなる。しかしながら、印象に残った記憶は、印象的な記憶の引き出しからたびたび表出し、決して埋没しない。それは、その画像に瞬間的に何かを見出した結果でもあろう。まさに、この記事にも記載されているように、ときめいた瞬間でもあろうか。ここで、筆者がときめいた画家スティーブ・ハンクスの作例を示したい。この絵は、彼の画集のひとつである「Moving On」の表紙にも採用されているが、見てわかるように絵画としてはこの記事でも記載したようにリアリズムに相当する。しかしながら、多くのリアリズムと異なる点が、これが水彩画による技法であることであろうか。文献2)にもあるように、スティーブ・ハンクスは、水彩画に感情と光と影によって形成される一種の詩的な瞬間を溶け込ませ、その技法はウォッシュ、エッジ、レイヤーの巧みなコントロールと、水と色の性質に関する知識から生まれたとされる。彼は、それを「moments of introspective solitude(内省的孤独の瞬間)」、あるいは、「emotional realism(感情的リアリズム)」3)と位置づけている。
図 スティーブ・ハンクスの作例1)
しかしながら、残念なことに、彼は2015年の4月に66歳という若さで心停止によりこの世を去った4)。ただし、彼が描いた絵の瞬間は、この世から永遠に去ることがない。時には筆者のように記憶に刻印される。
スティーブ・ハンクスは、ニュー・メキシコのキューバ近郊のキャンプでケアテイカーとして仕事をした。そこでの賃金は最低であったもの、4年半の冬の間に渡って、絵画技法を極めた3)。それは内省的で、たゆまぬ自己との対峙であったろうことが推測できる。彼のHP5)から多くの彼の作品を見ることができるが、彼曰く、「芸術は深い内向き感覚から来ます。」5)と述べ、それを裏付けるように、どの作例も深く心に響く。
1) https://www.pinterest.jp/pin/11962755245418503/ (閲覧2018.2.27)
2) https://www.goodreads.com/book/show/1737657.Moving_On (閲覧2018.2.27)
3) https://www.youtube.com/watch?v=BS--wNuDjMY (閲覧2018.2.27)
4) https://www.abqjournal.com/574933/artist-steve-hanks-dies.html (閲覧2018.2.27)
5) https://stevehanks.info/ (閲覧2018.2.27)
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