題名:海辺のシャコンヌ
報告者:ダレナン
もう泣かなくてもいいよ。
僕がいるから。
もうさびしくはないよ。
二人いっしょだから。
月明かりが海に落ちて、波間がきらきらと輝いていた。それ以外は、真っ暗。でも、光り輝く海は、波の音とともに、僕らの気持ちを代弁していた。
「暖かい。」
寒空の下、僕のジャケットのポケットに手を入れて、彼女はそう言った。
「いつまでもこうしていたいね。」
「うん。」
「大好きだよ。」
「わたしも大好き。」
そうして僕らは、抱き合いながら、唇をそっと交わした。
お互いの高鳴る胸の鼓動を感じつつ、
ときに波の音とともに奏でられる、
海辺のシャコンヌの調べを耳にしながら。
Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: V. Chaconne
by Johann Sebastian Bach
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