題名:ざるそばを食べる時から、それは始まった
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
傷口にもられた塩は、やがてじくじくとした痛みに変わり、この上なく耐えがたいのに、この上なく堪えがたい。ここまでの内容を整理すると、「耐える」=精神的に我慢する、「堪える」=能力が備わっている、ということになる1)。しょっぱいなのか、しっぱいなのか分からないこの出だしで、精神的に我慢すれば、きっとあなたに能力が備わるであろう。
そんなわきゃーない。
でも知っているのだ。ここに来て、引きはじめた潮の香りを。
そうだ。朝、海岸を歩いている時、波打ち際に打ち上げられた彼女の姿を見つけた(図)。その時、やがてこうなることはなんとなく予想がついた。
し、しんでる…。
体中に寒気がするとともに、しっしんがでた。とてつもない恐怖に直面すると、僕は、鳥肌を超えて、鮫肌になる。そして、ごしごしとその肌で、わさびをもけずれる。けずるのは、もちろん本わさびに決まっている。それ以外は、辛味が足りないからだ。
だから、ずるずるとざるそばを食べる時は、やはり鮫肌での本わさびに限る。その、つーんとした辛味の中の、芳醇な香りは、今けずったばかりの本わさびのみで、味わえる逸品。
こわごわとして彼女に近づくと、右手がかすかに動いた。
図 波打ち際に1)
い、いきてる…。
彼女に近づいてみると、かすかに息をしている。すぐにでもQQ車を呼ばなければならない。ポケットからスマホを取り出して、119番にかけようとして、「た、た、たしか、119だよな…」と言ったその時、
「バンゴーガチガウワ。911ヨ。デモ、モウ、ヨバナクテ、ヘイキヨ」
そうして、彼女は起き上がった。
それは黄昏(この物語)時とは違う、ある日の朝の突然の出来事であった。
1) https://kokugoryokuup.com/taeru-difference/ (閲覧2020.1.13)
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