題名:頭の中でBELOVED
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
とりあえず組合に向かった。伯父、いや組合長に軽トラをまず返さないといけない。その後は、今日は特に仕事はないから、相棒のZX-10Rの整備でもしようか。そして、5時前になれば、琉花のアパート(この物語)まで一直線だ。
軽トラで直進した道を進み、やがて交差点に差し掛かった。普段は迷うことない道に、一瞬、迷った。バイクと軽トラでは風景が異なる。迷うことがないはずの道で、僕は立ち止まった。さっきテルした影響もあるのだろうか。いつの間にか、空も再びグレイへと変化していた。晴美さんと手が触れ、見つめあった時のイマージュ(この物語)が、頭の中でBELOVEDした。胸が締め付けられそうだった。琉花に逢いたいはずなのに、晴美さん(図)にも逢いたい気持ちが止まらなくなっていた。
(晴美さん…)
図 晴美さん1)
伯父:「おっ、カツオくん。どうやった宍道湖のしじみは…」
「ここ(東郷湖)のものよりも、ちょっと小ぶりのようでした。それにしても、伯父…いや組合長の軽トラ、すごいですね。一般の路線でもかなりの加速感がありましたけど、これチューンナップしているのですか?」
伯父:「カツオくん、分かったか。おまえはおれとおんなじで、小さい頃からメカには強かったからなー。そうやで、これスーパーチャージャー搭載しとるんやで。しかも特別仕様や。そんじゃそこらの軽トラとは違うやろ。まっ、いってみれば、軽トラ界のポルシェ改ってとこやで。だからな、顧客にものごっつう鮮度のええ魚くれ、って言われた時はな、これで飛ばすんや。むかしの景気のええ時、大阪のええ料亭で、鮮度求められた時はな、こいつがよー走ってくれたんや。最近は景気よーないさかいに、あんまこいつの活躍もすくのーなったけんどな。おもろい軽トラやったやろ」
「はい、興奮しました…」
伯父:「琉花さんと行ったんやろ。喜んでたろ、彼女も…」
「いや、晴美さんと...」
伯父:「晴美さん?… そっか、カツオくんも隅に置けんやつやな。まっ、あんまり琉花さんを泣かしたらあかんで。彼女、カツオくんにほれとるでな」
伯父に言われなくとも分かっていた。でも、それぞれの交差点で、またも僕の気持ちが立ち止まっていた。
1) https://www.pinterest.jp/pin/821273682030406795/ (閲覧2020.2.15)
From ここから。© 2015 This is 地底たる謎の研究室 version。