題名:あなたをつつむすべ~てが~
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
軽トラといえども、伯父のこの軽トラは快調に走った。もしかして外観だけでなく、エンジンかどこかもチューンナップされているのかもしれない。船の整備にかけては、ぴか一の腕前をもつ伯父のことだ。そうに違いない。
組合長として働いている今でも、誰も伯父にかなうものはいなかった。ふと晴美さんを見ると、ふふふんと陽気に鼻歌を歌っていた。軽トラといえども、この車でのドライブには満足そうだった。車内の魚の匂いも気にしていないようだった。その時、カーステのFMから曲が流れた。
「ペンネーム、黄昏の初恋さんからのリクエストで、JUJUの「やさしさで溢れるように」1)(図)…」
「この歌、いい曲だよね~、カツオくん、そう思わない」
晴美さんは、手ぶりを交えながら、この曲を口ずさんだ。
“あなたをつつむすべ~てが~ やさ~しさ~であふれるよ~ぉおに~”
「わたし、この曲でよく踊るんだー」
図 JUJU1)
その時、手をふった瞬間、ふわりとFlowerの香りがした。晴美さんのあの香りだ。でも、しばらくすると、車内にはまた魚の匂いであふれかえり、晴美さんの香りがかき消された。香りがした時、一瞬、どきりとした。急に鼓動が高鳴り、息苦しく感じた、が、すぐに魚の匂いで収まった。
それにしても、晴美さん。しなやかな指先と、その手ぶり。きらきらと輝いて見えた。
「わたし、小学2年からダンスしてるんだー2)。どう、カツオくん。うまい?」
「うん、とってもうまい、きれいだ…」
「えへっ(笑)」
1) https://www.youtube.com/watch?v=jIl8_jMMULs (閲覧2020.2.7)
2) https://just-hang-on.biz/geinou/kasyu/e-girls/2521/ (閲覧2020.2.7)
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