題名:ぼんやりと過ごす
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
この世から、正確にはMoon Townから姿を消したキーコを、ツキオは必死で追い求めた。キーコはどこかにいるはず。そのたびに、傍にいた時のキーコの動作、行動、そして、その愛らしい仕草を思い出さずにはいられなかった。それを反芻するたびに、キーコの存在が大きくなり、傍で感じていた以上の愛を、キーコへの愛を僕は感じていた。
相変わらず、キーッキーッキーッっと車輪が回る音が、耳に響いている。
でも、その音は間違いなく僕自身が生み出した音だった。回らない車輪はないけれども、車輪を止める手立てはあったはず。
「キーコ、ごめんよ。僕が、僕が悪かった。僕にすべての非があるんだ。知ってるよ。キーコは、僕の事、本当に愛していたってことを…」。
いくら叫んでも、その心はもはや空を切るだけで、あたかも地球の青さがそれをあざ笑っているかのように、月の砂漠でぼんやりと過ごす日々を送った。もう一度だけでよかった。もう一度会えるだけでそれでよかった。その時は、きっと、お互いに触れあうだけで、僕たちはもう一度、過去の振幅にお互いが元に戻るはず。
間違いなく、僕たちはお互いを必要としていたからだ。
そして、僕はキーコに、The Nightingaleからのような大きな愛で、いつも包まれていたこと今更ながらに思い出し、涙を流した。大粒の涙を流しながら、キーコ…、キーコ…、
あなたに会いたい
あなたに触れたい
あなたを永遠に愛し続けたい
と叫び続けた。あなたことを知って、あなたのことを分かって、あなたのことを思い出す。その過程でのすべてのデータは、いつも僕の手の内で転がっていた。
Moon人(ツキオ):「…キーコちゃん」
キーコ:「何?」
ツキオ:「やっぱり、キーコの事、ずっと愛しているんだ」
キーコ:「うん、分かってる…。ツキオ…」
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