題名:ざくろ色した汁経験
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
朝起きると寝具がぐっしょりと濡れていた。あまりにもの出来事で、始めそれはおねしょかと思った。でも、下半身には濡れた形跡がなかった。よく見るとそれはどうやら汗のようだった。今の季節からいえば、気温自体はそれほど暑くないはずだ。だから、これほど汗をかいたのは何かの理由があったのだろうか。とにかく僕はユニットバスでシャワーを浴びることにした。
シャワーを浴びている途中、見た夢をおぼろげながら思い出していた。そうだ、僕は、ザクロが割られる夢を見たんだ。一つのことをきっかけに、僕はその夢を鮮明に思い出しつつあった。
そこには、割れたザクロがある。
ザクロを割ればその中の小さな実も一つ一つつぶされ、つぶされた実からは赤い汁がしたる。
齧る。
口からは液がしたたり落ち、その味に恍惚の表情を浮かべる。
その恍惚は頭に刻印される。
悪魔の紋章のように…。
やがて、その紋章が、もっと欲しくなる。
もっと欲しくなる。
あぁ、なんて美味いんだろうか。この実は…。
「にゃおーん」
リトルの声が聞こえた。それは夢の中か、現実なのか分からなかった。
シャワーを早々に切り上げた僕は、バスタオルで濡れた体をふき取るかふき取らないかのうちにベッドに戻った。リトルはベッドの下の自分の寝床でまだ寝ていた。起きた形跡はなかった。
「リトル…」
と声をかけると彼女は少し顔を上げ、僕の方を見返したかと思うと、再び眠りについた。
時刻を見るとまだ4時44分だった。まだ眠れる。
僕はシーツを変え、寝間着を変えて、再び布団の中に入った。
シャワーを浴びた際に思い出した夢を反芻していた。そのうちに、夢の記憶が消えるか消えないかのうちに、僕は再び眠りについた。
眠りの中で僕は宙を舞っていた。それはまるで、ざくろの色(図)のように、セルゲイなパラジャーノフの、ざくろ色した汁経験だった。
図 ざくろの色1)
1) https://www.criterion.com/current/posts/5572-the-color-of-pomegranates-parajanov-unbound (閲覧2021.4.1)
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