題名:ノーチラス号の冒険譚 -オウムガイの最大深度について-
報告者:ダレナン
本記事は、この記事の続きです。
オウムガイは頭部下側(腹側)の外套膜が筒状に巻いた漏斗より、飲み込んだ海水を勢いよく噴出するジェット推進を備えている1)。そのジェット推進によって200~300mもの深海から急速に浮上できる。また、殻の中にある気室によって殻を常に上向きにした姿勢で安定させることができる。その遊泳する姿はYoutube2)にもあるので興味のある方は閲覧していただきたい。ジェット推進の動画ではないが、安定している姿勢を、そこで詳しく見ることができる。
一方、ここでの記事でも示したように、現生オウムガイ類は白亜紀時代のオウムガイ類と異なって深所へも移動する。それは、浅所での高い捕食圧を逃れるための適応戦略であるが、現生オウムガイは、どのあたりまでを最大深度としているのかを、詳しく知ることは、オウムガイさまさまで、筆者にやり貝といき貝を与えてくれている今現在、興味のあるところでもある。それは、潜水艦ならば、深度がどのくらいまで耐えうるのか、という基準にも近い。ちなみに、第一次世界大戦中の潜水艦の最大潜航深度100m程度であったが3)、第二次世界大戦中のドイツ海軍の潜水艦UボートVII型の潜航深度は230m(計算上の圧壊深度は250-295m)m4)、大日本帝国海軍の潜水艦である伊四百型潜水艦の安全潜航深度は100m5)ほどである。第二次大戦後の1955年に完成した米海軍の、その名もノーチラス(オウムガイ)は、史上初の原子力潜水艦で、安全潜入深度は213m6)である。ジュール・ヴェルヌによる小説「海底二万里」に登場するノーチラス号は、藻の海で深度16000mまで潜れる7)。
オウムガイにおける最大深度を調べると、図のようになる。限界は0~800mであり、これは潜水艦にすれば、艦が破壊される圧壊深度幅になることから、通常ではないものの、最大の潜航深度幅は70~500mとなる。なお、好みの深度幅は150~300mとなり、先の記事で出合ったオウムガイの通称:ノーチラス号は、大戦中の潜水艦よりも優れた性能を有していることが分かる。
図 オウムガイの生息域8)
1) 福田芳生: 新・私の古生物誌(4) アンモナイトの進化古生物学(その1)。THE CHEMICAL TIMES 207: 17-21, 2008.
2) https://www.youtube.com/watch?v=HIRCI0G19Uw (閲覧2019.2.27)
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/潜水艦 (閲覧2019.2.27)
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/UボートVII型 (閲覧2019.2.27)
5) https://ja.wikipedia.org/wiki/伊四百型潜水艦 (閲覧2019.2.27)
6) https://ja.wikipedia.org/wiki/ノーチラス_(原子力潜水艦) (閲覧2019.2.27)
7) http://www.okinawa-ctv-kyosai.or.jp/yomoyama/hoken/49.html (閲覧2019.2.27)
8) Saunders, WB: The role and status of Nautilus in its natural habitat: evidence from deep-water remote camera photosequences. Paleobiology 10: 469-486, 1984.
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