題名:眠りに落ちた。
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
とても険しい目をしている彼をしり目に、僕も次第に眠りに陥った。
眠りの中での彼”くっくどぅーどるどぅ”はとても優しかった。クミちゃんらしきヒヨコに対して、毛並みをそろえたり、一緒に羽根を整えたり、お互いとても自然に関わっていた。その僕が、その彼”くっくどぅーどるどぅ”が、何でクミちゃんを殺さなければいけないのか、僕には、さっぱり分からなかった。
夢の中でも、現実でも、僕には答えがでなかった。
そうして、眠ったか、眠っていないのか、分からない夢うつろのままに、僕たち二人は、伊香保での3日間を過ごした。一晩三日とも言える状況でもあった。ただ、幸いなことに、プランはほぼ素泊まりだったから、別段問題はなかったものの、障子を開け放つことなく、寝食も忘れて僕たちは交わっていたことになる。
旅館のチェックアウトを済ませ、そこで始めて僕たちは相当にお腹が空いていることに気づいた。
「タケヒサさん、なんか食べようよ」
「そうだね。結構、お腹がすいているね」
「ほとんど何も食べてなかったからだろうね」
「うん、でも、わたしは、とってもしあわせだった」、「僕も…。とっても」
そうして、僕たちは旅館を出たすぐのうどん屋に入り、大盛りを頼んだ。二人とも、勢いよいよくうどんを啜った。次第にお腹が満たされた。
その後、伊香保に来た時と同じように、僕たちの旅路を繰り返すように、もう一度、二人は伊香保温泉の観光場所を巡った。
そのうち、夕方近くになった。二人は頃合いを見て新幹線に乗り、東京までの岐路に着いた。
東京駅にはちょうど仕事帰りの人でごった返していた。
動輪の広場で、僕たちは抱き合いながら、別れを惜しみ、抱き合った。そしてキスし、別れた。
クミちゃんから離れると、僕の眼の前には何かもが色あせたような世界が訪れた。その世界が、どうしようもなくうんざりで、僕は近くの売店で大量にビールを買うことにした。それは、ハイネケンでもなく、Pabst Blue Ribbonでもなかったが、Grolschとしてオランダのように飲めば飲むほどいい感じにすべてを失うことが出来た。そうして、気がつくと、僕は、そのクミちゃんとの三日間のすべての出来事がすっかり頭から欠落していた。
僕は、今日一日、何していたんだっけ…。そうだ、今日は、サメジマさんに叩かれたんだっけ。
僕には無理だ。もう、これ以上、無理だ。
こんな仕事もう続けられない。こんな仕事辞めたい。辞めたい。
シズコにそのことをちゃんと伝えなきゃ。
家に帰ると、すでに真っ暗だった。シズコも寝ているようだった。僕も布団にもぐりこむなり、気絶するかのように、その日は眠りに落ちた。
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