題名:かつてのわたしの
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
あの絵がどこにあるのか?
わたしは祖母の部屋をくまなく探した。祖母の想い出の品が次々と出てきた。ただ、絵は見つからない。
さらに、その想い出の品いずれもが少しばかりほこりをかぶっていたことが気になった。
そうだ。祖母が亡くなってから、この部屋に来た記憶がない。すなわち、5年近くこの部屋に入ったことがないことに気づいた。誰も入らなくとも、しんしんとほこりが舞い落ちて、祖母の大事な調度品を、ほこりという存在が台無しにしていた。それはまるで、想い出に覆いかぶさるような誇りの悲劇でもあった。
探している途中、祖母の部屋の一部には、意外と立派なオーディオ機器があったことに、わたしは今になって気づいた。それ自体のほとんどがかなり古いものであった。何十年か前のヨーロッパ製のものなのだろうか。いかにも祖母が好みそうなラインナップだった。その古さゆえの年式から、果たして各機器の電源がちゃんと入るのだろうか。
スイッチをバチンとONにした。意外とショートすることもなく、すべてがちゃんと起動した。レコードプレーヤーもどうやらちゃんと起動している。そこで、そのプレーヤーの上に置かれて板、板…レコード盤かに針を載せるべく、わたしはボタンを押した。スーッと針、トーンアームは動いて、レコードの先頭部分にスッと針を落とした。その自動的な動きから、プレーヤー自体は新しいものであったのかもしれない。
そうは思いつつも、いや、ボタンを押したのは、自分の意志からの動きだったことに、後で気づいた。自動に動いているように見えて、自らトーンアームを当たり前のように動かしていた。それは、かつてわたしが経験したことなのだろうか、それとも、それがアナログ的に分かりやすい構造だったからなのだろうか。
ともかく、ただ、THORENSと銘打たれたそのプレーヤーの大きさ、まさにPrestige級のその姿に圧巻されていた(図)。祖母がこれほどまでに、音楽再生にこだわりをもっていることにわたしの表情、気持ちに驚きを隠せなかった。あまりにもわたしは無頓着だった。
図 THORENS、Prestige1)
(これは、かなり高いんでないの?)
そして、レコードを再生する中間機器のフォノイコライザーも見事に中間的な音の媒体をアップしつつ、仕事を着実にこなしていた。そのイコライザーがまるで、デンゼル・ワシントンのように効果を発揮していた。
彼は、まさに仕事人であったといえようか。必殺な仕事人。普段はホームセンターに勤めている。が、その状況からは、ホームセンターのだたのひと、しと言えるかもしれない。ただのひとし、で、只野仁。その秘めた能力は、特命係長のようにも見える。だからこそ、デンゼル・ワシントンのかっこよさにしびれてしまう。高橋克典のように、あこがれてしまう。それは、かつてのわたしの…、
1) https://soundpit27.exblog.jp/20501020/ (閲覧2021.3.21)
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