題名:「あーぁほーかい、ほーかい」なる葬送曲
報告者:ダレナン
本物語は、この物語の続きです。
今日、妻との面会を終えた。来週に退院することとなり、僕の心はまるで新しい建築物が生まれた街のようにきらびやかしていた。しかし、その夜に、新しい建築文が、崩壊する夢を見た。ここの文のように...。
その崩壊する様子を眺めていると、傍らにちっちゃいおっちゃんがいたことに気づいた。彼はスクラップの金属片や建設用機材から作られた自作の楽器を叩きながら、「あーぁほーかい、ほーかい」と僕に叫んでいた。その様子はまるでバンドのEinstürzende Neubauten(崩壊する新建築)のようだった。僕は「それってEinstürzende Neubautenのパクリじゃないのか」とかれに聞いてみたが、かれは一向にそれに答える素振りもなく、「あーぁほーかい、ほーかい」と繰り返し続けて叫んでいた。同時に、僕は会ったこともないpatient O.T. 田所治とも交信したかのように、かれがきっかけで何かの痕跡が心の中でDrawingされたかのように思えた。
そしてかれは、その僕の心の中のDrawingを見透かしたように、ピタリと自作の楽器を叩くことをやめ、「あーぁほーかい、ほーかい」とも叫ばなくなった。僕をじろりと見つめ、手から何かを差し出した。僕はそれを受け取るとちっちゃいおっちゃんは煙に巻かれたかのように、消えた。
手の中にはEinstürzende Neubautenのセカンドアルバム「Zeichnungen des Patienten O. T. (Drawings of Patient O. T.)」があった。
図 Zeichnungen des Patienten O. T. (Drawings of Patient O. T.)1)
「あーぁほーかい、ほーかい」なる葬送曲 完
1) https://www.amazon.co.jp/Zeichnungen-Patienten-Einsturzende-Neubauten/dp/B00007BKOH (閲覧2021.8.30)
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