題名:ザッハトルテはなぜ「ザッハトルテ」なのか?
報告者:トシ
チョコレートケーキの代表格であるザッハトルテは、その名が示すようにやや固い印象がある。例えば、同じケーキでもイチゴショートやシュークリーム、マカロンなどの名はやわらかい感じがする。しかしながら、ザッハトルテは非常に固そうである。ケーキではなくとも、パンでも実際に固いパンがあり、その代表としてカンパーニュが挙げられるが、こちらはザッハトルテと異なり、その名は体を表さず、やわらかい印象が持てる。それでは、なぜケーキであるザッハトルテは、「ザッハトルテ」という固い名称になったのであろうか?
ザッハトルテの起源を探ると、クレメンス・メッテルニヒに仕える料理人の一人だったフランツ・ザッハーが1832年に考案したとされている1)。フランツ・ザッハーの写真を図に示す。そのフランツ・ザッハーが仕えていたクレメンス・メッテルニヒは、正式にはクレメンス・ヴェンツェル・ロタール・ネーポムク・フォン・メッテルニヒ=ヴィネブルク・ツー・バイルシュタインととても長い名があり、ドイツ出身のオーストリアの政治家であったようである2)。フランツ・ザッハーもオーストリアのウィーンに生まれている3)。その両者の関係から、むろんザッハトルテもオーストリア生まれで、今ではオーストリアの代表的な菓子とされている1)。ちなみに切り分けて食べる焼き菓子の種類をドイツ語でトルテといい3)、ザッハトルテの語源は、ザッハー氏によるトルテということになろうか。すなわち、ザッハトルテのザッハは人の名であった。
ザッハトルテの固い印象を与えているのは、トルテという語よりも、むしろザッハという語の響きであるが、写真から拝見してもザッハー氏は、なかなか厳しい面を備えた方だったのかもしれない。
図 フランツ・ザッハー氏3)
このように人の名がついた菓子はほとんど聞いたことがない。代表的な洋菓子の名称を列挙すると5)、ウエハース、エクレア、ガトーショコラ、キャラメル、クレープ、スフレ、シュークリーム、ショートケーキ、タルト、ドーナツ、バウムクーヘン、ババロア、パンケーキ、プディング、ブレッツエル、ホットケーキ、マカロン、マシュマロ、マドレーヌ、ミルフィーユ、ムース、ワッフルなど、どれもが一度は聞いたことがあるものが多いが、この菓子の中で人の名がついた菓子はひとつもない。クレメンス・メッテルニヒはなかなかの美食家だったようで、彼の舌をうならせるためにも、ザッハー氏は相当に苦労したに違いない。しかしながら、こうして現在も彼の名が残るチョコレートケーキの代表格に君臨するザッハトルテは、天国のザッハー氏にもその名誉が届いているに違いない。当方が仮にその時代にトルテを作り、名づけたとしたら、「トシトルテ」となろうが、そんなまずいもの食べたら「俺「年とるで~」」と、ザッハー氏に一喝されたかもしれない。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/ザッハトルテ (閲覧2015.11.19)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/クレメンス・フォン・メッテルニヒ (閲覧2015.11.19)
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/フランツ・ザッハー (閲覧2015.11.19)
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/トルテ (閲覧2015.11.19)
5) http://www.zenkaren.net/_0300/_0302/_030202 (閲覧2015.11.19)
6) http://allabout.co.jp/gm/gc/217741/ (閲覧2015.11.19)
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