地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

かつての僕はAmazon.comを利用していた。



「宇宙コロニー( Off-world colonies )での新しい生活が貴方を待っています。チャンスと冒険に満ちた黄金の土地に、再び巡ってきた好運。」 “A new life awaits you in the Off-world colonies. The chance to begin again in a golden land of opportunity and adventure.”

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題名:かつての僕はAmazon.comを利用していた。
報告者:ダレナン

 本物語は、この物語の続きです。

 長い心の時間旅行から目覚めたように、八度美幸との面談を終えた後、はっとして私(花見)は机の引き出しを開け、あの論文を眺めた。それは私が精神科医を志すきっかけとなった論文でもあった。そこにはあのpatient O.T.の特徴が明確に記載されている。patient O.T. 田所治。それが彼の本名だ。

...

 ここで筆者である僕は、随分とシリアスな物語を執筆していることに気づいた。この前の三行の中には空白の期間、約1ヶ月より少し少なめの日数が経過している。
 僕はこのままこの物語を執筆すべきか、それともすべきでないか迷っている。
 だが、しかし、ここで挟んだ文章はこの物語を執筆することを放棄しているとも言えようか。
 いや、続きを書きたい。頭にも漠然と続きのストーリーが奏でられている。幽かにだが…。
 でも、しかし、若干の言い訳をすれば、ちょうど執筆がとどこった(とどこったという日本語表現はあっているのだろうか…?)同じような時期にKindleがスマホでの利用ができなくなったことにも起因している。
 起因だ。それが…(それで、いいわけで、それも、言い訳だな(笑))。
 ある時を起点に、執筆に際していくつかの小説の文体を参考にして僕は記述するようになった。僕は別に小説家になりたいわけではない。もともとそのような国語能力に恵まれていない僕としては、今更それには向いていないことはとんとわかっている。とどこったという日本語表現すらも怪しい。でも、映画を見るのと同じく、フェバリットな作家の作品を読むと、無性に感動する。心が震えるのだ。
 そうだ、僕もこんな文体を描きたい、と。
 それは、その文体は、村上春樹さんであったり、唯川恵さんであったり、谷村志穂さんであったりする。その他にも、かつては宮本輝さん、山田詠美さんにもハマってよく読んだ。その他にもあったが、そうそう藤堂志津子さん、小川洋子さん、小池真理子さんもよく読んでいる。その他にもあったな…。海外のSFホラー作家もよく読んだな。スティーブン・キングは何故かあまり読んでいなかったけれども…。
 でも、一旦その世界を離れると、そう文体を読む、小説を読むという次元から生活上離れてしまうと、その感動を僕は少しずつ忘れることになった。いつの間にやら専門的な文章を多く読まざるを得ない状況に追い込まれ、小説というフィクションの世界に溺れることをすっかり忘れていた。それを思い出させてくれたのが、黄色く古びたかつての僕の書棚の中の文庫本だった。書棚にはガラスで扉があるも、ガラスを開けっ放しにしていた棚の本には、うっすらと上にホコリがかぶっていた。だが、ページの中には独自の文体が宿っていた。
 僕にはこの世界があったんだ…。
 僕はかつての感動を思い出し、そして物質としての文庫本があるにも関わらず、電子的にKindleで買い直すことになる。Kindleを使い始めた当初は専門書が多かったものの、自分が執筆するようになってからは段々と小説が増えていく。Kindleの書棚に小説が増すとともに、僕は忘れていた何かをますます思い出そうとしていた。かつての僕はAmazon.comを利用していた。

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