地底たる謎の研究室

3000km深から愛をこめて

クミちゃん の検索結果:

ヒヨコからニワトリへと成長した。

…社の人に確認すると、クミちゃんも僕の前から消えるように“なぜ“か退職していた。退色の無色で、僕は何色にも染まることなく、僕の頭の中も透明なくらいにブルーになっていた。何もかもがそこから消えていた。 僕は本当に愛していたのだろうか? シズコのことを、クミちゃんのことを。その愛の痛みをも…。 あれから1年。 シズコはすでに僕の過去にあったことも、表面上は何も攻めなくなっていた。”くっくどぅーどるどぅ”も、ヒヨコからニワトリへと成長した。(よりによって、わたしも知っているワカモト・…

眠りに落ちた。

…はとても優しかった。クミちゃんらしきヒヨコに対して、毛並みをそろえたり、一緒に羽根を整えたり、お互いとても自然に関わっていた。その僕が、その彼”くっくどぅーどるどぅ”が、何でクミちゃんを殺さなければいけないのか、僕には、さっぱり分からなかった。 夢の中でも、現実でも、僕には答えがでなかった。 そうして、眠ったか、眠っていないのか、分からない夢うつろのままに、僕たち二人は、伊香保での3日間を過ごした。一晩三日とも言える状況でもあった。ただ、幸いなことに、プランはほぼ素泊まりだっ…

とても険しい目

…い、僕自身なんだ)とクミちゃんに告げようかと思った。それでも、結局、僕は、クミちゃんの話に対して、「分身か…、なかなか面白い夢だね」、としか答えられなかった。 …、部屋の奥で光っているあの二つの目がきらりと光っている。口をうっかり滑らそうものなら、そのつるはしで頭をぶち抜くぞという態度を、彼”くっくどぅーどるどぅ”は示していた。「くみしゃんにはいうな。ほんちょうのこと、いっちゃだめだ」と、その態度から口止めされていた。 僕の場合、彼は夢じゃなかった。彼は、夢から覚めてもそこに…

分身

…すごくよかった…」 クミちゃんは、そうつぶやいた。僕もそうだった。 大好き人と結ばれるのは、肉体だけではない。心もつながるんだ。それを実感していた。 「あったかい…」 「うん。そうだね」 しばらく僕たちは抱き合い、見つめ合った。そしてそのまま自然と眠りに入った。心地よい眠りだった。お互いがお互いで、それらの互いの肌で包まれている。未だかつて、それほど温かい布団はなかった。 再び目を覚ましてから僕たちは接吻し、そしてまた交わった。その後も、寝ては目を覚まし、何度も何度も交わりな…

白銀の湯

…。 肌を確かめると、クミちゃんがそこに居るのが実感できた。僕とクミちゃんの肌が溶け合うように、僕はクミちゃんのあらゆるところをまさぐった。 ずっと離れたくない。クミちゃんのことが大好きだ。とっても大好きなんだ。 時折、もらす吐息は、特別なにほひは、僕にその想いを強くさせた。 再び、僕は顔を上げて、クミちゃんを見つめ直し、その唇に唇で触れた。薄暗い明かりの中で、クミちゃんはにこりと笑い、「タケヒサさん、大好き…」と抱き着いてくれた。それに呼応するかのように、僕もぎゅっとクミちゃ…

特別なにほひ

…の物語の続きです。 クミちゃんに「温泉はどうだった?」と問われ、「黄金の湯だったよ」と答えた。今度は「クミちゃんの方はどうだった?」と僕は問うた。「素敵だった。タケヒサさんとここに来られてよかった」とクミちゃんは答えた。その時、湯上り後のほのかな温泉の香りがした。 窓の外には街灯に照らされた石段が見えた。窓に面した椅子に僕たちは二人並んで腰かけながら、二人でそれをしばらく眺めていた。そして、クミちゃんは振り向きざまにこう言った。「わたしのことずっと忘れないでね」「忘れるって?…

大欲情

…に変わらない。それはクミちゃんへの愛と全く同じだった。好きなんだ。大好きなんだ。クミちゃんが…。 実は、Bedtime StoryはOfficialでもう一本ある。Damn。両方とも最高だぜ。Baby。 風呂上がりに、ストーリーの主題でもあったハイネケンではなく、Pabst Blue Ribbonをしたためながら、このテキトーな流れに若干の罪悪感を感じつつ、これもええなーとの思いに駆られ始めていた。 黄金の湯を堪能し、僕は温泉から上がった。脱衣室にある鏡を見ながら、再びその僕…

想いがJoeと溢れて

…続きです。 その後、クミちゃんは「じゃあ、温泉に入ってくるね」と告げた。僕は静かに頷いた。タオルと浴衣を携えてクミちゃんは大浴場へと向かった。 人と比べてはいけない。自分なりの道をただひたすらに歩めばいいんだ。洗面所の鏡に向かって、僕は自分自身で呼吸を整えた。それでも、仕事で疲れている僕の顔の中に、ここでの文章は間違いなくしあわせな自分を見つけることができた。こんな思いは久しぶりだった。 僕は、このあとの、クミちゃんと過ごせる時間に意識を集中すればいい。 人生は、仕事だけでは…

Reflexion。

…過ぎなかった。でも、クミちゃんの髪は、紙のようなペラペラでなく、神に似てフワフワして、僕には大いに意味があり、大いに価値があった。フワフワとして、くるくるしているその髪は、今しがた美容院から帰って来たかのような軽やかさを表現していた。その髪型は、真っ白な服を纏っているクミちゃんにとっても似合っていた。 僕たちは、旅館の人に部屋まで案内され一礼し、トータルして二礼二泊手一礼で泊まるその部屋に入ったとたん、きれいに真っ白い紙の透き通った和室の障子からは、夕闇の美しい明かりが漏れ、…

僕たちの神さま

…物語の続きです。 「クミちゃん。来週じゃなく、今すぐ温泉に行こう。緊急事態なんだ。僕には、もう、クミちゃんしかいない。クミちゃんと一緒じゃないと僕はどうにかなりそうなんだ。今すぐ温泉地に行こう」 クミちゃんの手を握りながら訴えた。少しばかりどうしていいか迷っていたクミちゃんだったが、すぐに、「タケヒサさん。ちょっと待ってて」 そういって、クミちゃんは奥に消えた。かと思うと、すぐにその後に、「タケヒサさん。大丈夫。行こう…、わたしの都合は、何とか説明してきた。大丈夫、落ち着いて…

記憶がまざまざと

…襲ってきた。ここに、クミちゃんと来たことがある。ここにもクミちゃんと来たことがある。そして、僕はある旅館の前を横切った時、強烈なイメージが見えた。 僕は、今、クミちゃんと抱き合っている。 どういうことなんだろう…。どういうことなんだ…。「しょうゆう、ことなんだ」 目の前にあのヒヨコが居た。名札にくっくどぅーどるどぅと書かれているあのヒヨコだ。僕自身かもしれない、くっくどぅーどるどぅ。「しょうゆうことなんだ。ぼきゅは、くみしゃんにむちゅう。きおくがけちゅらく」「欠落?」「しょう…

その愛の痛み

…ろうか。そういえば、クミちゃんと調査という名の旅行も伊香保温泉だったっけ。「会社のGo To 温泉地のキャンペーンで、伊香保温泉まで行くことになった。」とシズコに嘘を告げたことも思い出した。 車窓を眺めながら、バックからハイネケンを取り出して、飲んだ。しばらくするとわずかな眠気が襲ってきた。少しばかり目をつむり、Bluetooth ワイヤレスイヤホンを耳に挟み、Thursday Afternoon(木曜の午後)をこれでイーノとばかりに耳に流した。 しばらくそのまま眠っていたよ…

伊香保していた

…。あるいは、シズコとクミちゃんとの接点かもしれない。いずれにせよ、今の僕は、幾分、まともになっている。 風呂で体の汚れを落とし、髭をそり、再び自分の顔をチェックした。(勤めていた頃よりも、むしろこれが本来の自分だ) あの当時の、ギラギラしていた自分に戻れていた気がした。 あの当時? どの当時? 詳しくはその時期が分からなくとも、僕は還っていた。 嫌な顧客におべんちゃらを使うことなく、「すごいですね」、「さすが」という心の否定とは裏腹の言葉を投げかける必要もない。本来の居場所に…

まるで浮浪者

…間違いない。これは、クミちゃん。クミちゃんだ)そう、確信した。「なんてこった。クミちゃんは、シズコの会社に勤めていたんだ」 僕は大きな独り言をつぶやいた。人から見ると、明らかにおかしいと思われる大声だったろうか。でも、僕には、そうなるだけの大きな発見だった。何か、何かの手がかりが、シズコとクミちゃんの間を結んでいる。その大きな接点が、ここで見つかった。「彼女らは、つながっている」 僕は、そう確信した。 その後、僕は、同じ日付のシズコの慰安旅行らしき写真を探しに探した。シズコの…

永遠の解答

…僕は考える。シズコとクミちゃんを通して、僕はそれを考えた。答えが出ない。それは、ぼきゅは、ばきゅんと、ころした。からだ。 僕は仕事に行かなくなったまま、布団の中でうずくまっていた。時折、チキンラーメンを食べるも、それ以外は、ほとんど部屋の中でうずくまっていた。妻へのLINEも相変わらず既読にはなっていない。会社の受付の代理の子にも頼んだはずのクミちゃんからの連絡もまったくない。だから、僕は、ある意味、この世から消えていたのだろう。自分が望んだように。仕事も、シズコも、そしてク…

永遠の愛なんて存在しない。

…た時から、僕の中で、クミちゃんは輝きだした。それまでにも、彼女は受付にいたはずだった。でも、始めて、何かが結びついている、そう思えたのはなぜ、なんだろうか。それを実感した日以来、クミちゃんの存在は、僕にとって特別になった。“豊かでなめらか、そして温かみのある声”。どうしようもなく僕の心は震えた。 そういえば、シズコもそうだったのかもしれない。その声の音色に自然と共鳴してしまう。それは、その声は、僕にとって一種の音楽の様でもあるからかもしれない。 好きな人が、好きな人の存在が、…

“豊かでなめらか、そして温かみのある声”

…す」と、“豊かでなめらか、そして温かみのある声”が聞こえる。その声にふと僕は顔を見あげると、そこにいたのがクミちゃんだった。 戦場で出会った一輪の花のように、僕はクミちゃんを一凛の花に置き換えた。 単なる輪ではなく、凛としてそこに咲いている。 受付の妖精のように、そこに留まっている。 それはかつての妻シズコから受けた影響でもあり、それとは異なる種類のものだった。 でも、何かが結びついていた。From ここから。© 2015 This is 地底たる謎の研究室 version。

これで、十分じゃん

…だろうか。 そうだ、クミちゃんからは連絡があったかもしれない。 重い体を起こして、スマホの着信をチェックした。着信は、会社からか、サメジマさんからしかなかった。一つだけ知らない電話番号の着信があった。それ以外は、本当に、会社からのものしかなかった。 仕事に追われているうちに、僕は戦場からの伝令以外は何もなかったことに気がついた。軍の命令。僕は軍人。あのヒヨコが言った通り、僕は軍人になっていた。ころしゅて、ぼきゅは、ぐんじんになっちゃんだ。 そういえばクミちゃんとの関係の前から…

軍の命令

…面まで歩いていると、クミちゃんの代わりの受付の子が「タケヒサさん、どうしました?」と心配そうに僕を見ている。「いや、何でもない。かなり疲れているみたいなんだ。今日はどうしても仕事にならないから、帰ることにしたんだ」、「そうなんですね」、「そうだ、君にお願いがある。もし、クミちゃんが明日以降に受付に戻ってきたら、僕に連絡をくれるよう伝えてくれないかな」と、彼女に僕の連絡先を渡した。彼女は特に疑うことなく、「いいわよ」と答えた。だから、僕は素直に「ありがとう」と答えた。 これで僕…

僕が殺してしまったんじゃないか

…な予感がした。きっとクミちゃんもいない。 気分を整えるために、僕はいつもよりも丁寧に歯を磨き、丁寧に顔を洗って、家を出た。 地下鉄はいつもと同じように、同じ時間にちゃんと到着した。乗る乗客もいつもと同じような顔ぶれがそこにはあった。いつもと変わらない日常。でも、明らかに何かが違っていた。シズコが消えただけでなく、僕の周りの空気が希薄なのだ。こめかみあたりもズキンとして、体全体がオブラートに包まれている。僕だけが違う世界にいるんじゃないか。そう錯覚した。 会社に着くと、今朝の悪…

「貴様。それでも軍人か」

…い浮かびつつ、同時にクミちゃんのことも思い浮かんだ。もし、二人とも永遠に逢えなかったら、どうなるんだろうか。 妻とのLINEは、今もまったく通じない。確認しても、既読はなかった。妻は殺されたのか? 妻シズコは、あのヒヨコに本当に殺されたのか? 僕は自分に今しがた起こった出来事に対して、まったく理解ができなかった。 あのヒヨコのせいだ。だから、あのヒヨコのせいで、僕は二人に連絡が取れないんだ。 一方で、LINEという手段でなくても、僕たちの間には何かしらの連絡方法があったんじゃ…

暗闇の向こうから

…社に入るとフロアにはクミちゃんがいなかった。日付から今日は出社している日のはずが、どうしたんだろう。代わりの受付の子に聞いてみた。「クッ…ワカモト・クミちゃんは、今日はお休みなのかな?」、「そうみたい。風邪ひいたって聞いた。それで、代理で今日一日、わたしが受付するの。えーっと、お名前は」、「営業のタケヒサ・ダリオです」、「タケヒサさん、おはようございます」、「おはよう…」。 たぶん、たぶん昨晩だが食事会の時は何ともなかったのにどうしたんだろうか。心配になった。連絡を取ろうかと…

ニワトリ並みの鳥肌

…の物語の続きです。 クミちゃんとの食事会という名の仕事が終わり帰途に就くと、妻が家の中で、真っ暗な中でぼーっとしていた。一向に動こうとしない。「暗いよ」と電気をつけた。食卓には僕の食事も準備されていた。「どうせ、”もう”食べて来たんでしょ」と妻が言った。「仕事だから、仕方がない」。「仕事だから…、ふん、そうなの」。それ以上、妻は何も言わなかった。 とりあえず僕は週末の仕事のことを妻に話した。「来週の週末、会社のGo To 温泉地のキャンペーンで、伊香保温泉まで行くことになった…

一向に動かない牛

……。 その後、僕は「クミちゃん、誕生日おめでとう」と伝え、さっき買ってきた一輪の赤いバラの花を渡した。何の花がよいか知らなかった僕は、「とりあえずこれでどうでしょうか」と店員さんに勧められたバラだった。「ありがとう…。うれしいな。タケヒサさんは、赤いバラの花ことば、知ってる?」「知らない」「熱烈な恋っていうんだよ」「熱烈…」「うん、そう」 その時のクミちゃんの微笑みは明らかに社のフロアにいる時とは違って、僕だけのための微笑みをした。その微笑みに僕は(そうだ、僕はクミちゃんに助…

同調する

…という名の仕事としてクミちゃんと食事している。(あたりまえでしょ。彼女もあなたのことを好きになりかけているの。それが、分からないの…)妻の声が聞こえた。(あなたには欠けているのよ。配慮が…。だから、周りに人を知らず知らずに傷つけているの。分かんないの、それが…) 僕は小さいころからぼーっとしていた。だから、いつも自分の世界で遊んでいた。誰かと遊んでも、そこには誰かの考えが入ってこなかった。大人になった今も、会議でもそうだった。「タケヒサさん、何か意見はありますか?」と問われる…

何かが不安定で崩れている。

…ょ。ダリオ)(でも、クミちゃんとは食事会なんだ、仕事上の)(そんなの嘘よ)(一線は超えてない)(あたりまえじゃない。そんなことしてたら、わたしここにはもういない。もうここにはいられないの) 妻の泣く顔が見えた。(でも、シズコは僕のことを理解していない。僕を理解している。…?)(理解しようとしてるじゃない。あなたこそ、すぐに心を閉ざすじゃないの。だから、わたしに理解しろって言われても、それはあなたにも、問題があるんでしょ) 妻の言うことももっともだった。僕は都合が悪くなるとすぐ…

僕を理解している。

…誰にもばれないようにクミちゃんに手を振る、クミちゃんも小さく小さく僕に手を振る、笑顔で返してくれる。そのやり取りが僕の心の支えにもなっていた。 ごくごく個人的な、食事会という名の仕事。 初めての食事の時、二人同時につまみ、カーボデペニャスあるいはに手を伸ばしたことを思い出した。スプーンが触れ合った。ハイネケンを飲む際もカーボデペニャスを食べる際も息がぴったり。こんな一致することは普通ないだろ、それっておとぎ話の中だけの偶然で、現実的ではない。そう信じていたが、実際に僕とクミち…

カーボデペニャスあるいは

…その日が、僕にとってクミちゃんとの初めてデートの夜だった。僕には妻もいる。だから、これをデートといっていいのか…。後で、そう自問自答した。そう思いながらも、その時の僕の心は浮ついていた。 でも、あの時、例えクミちゃんから「はい」と返事がもらえなかったとしても、「OK」が出なかったとしても、僕の還るところはここだと信じていた。そんな僕を見て他の人からは、受付のアイドルそれって思い込み、そんな会社じゃないぞうちは、と言われたかもしれない。ただ例え誰が何と言おうとも、それが妻であっ…

二人だけの合図

…い。むろん妻にもだ。クミちゃんもそうだった。でも、告げてはないにせよ妻は気づいていた。きっと彼女のチェンジはそこから始まっていた。隠していても自然と表に出る僕の意識、それは確実に妻にも届いていたのだろう。「最近、楽しそうね。なんかあったの?」「いや、特にないけど。たぶん仕事が充実しているんだ」「ほんとに仕事?」「う、うん、まあね。今日も遅くなると思う」「そう、なの? 今晩、ダリオくんの好きなカレー作る予定だけど。クミンたっぷりの。どうする」「く、くみ…ん…。たたぶん、今日も仕…

そこで死んでいたんだ。

…輪の花が咲いていた。クミちゃんの微笑みが浮かんだ。社に還ろう。帰るのではなくて、還るのだ。僕自身を。 少しほとぼりが冷めたところで、僕は社に戻った。「タケヒサさん、お疲れさまでした。出張はいかがでした」 クミちゃんはさっき河原でみたあの花のように、僕を迎えてくれた。この時、ようやく僕には還るところが見つかった気がした。今がいいきっかけかもしれない。僕はクミちゃんを食事に誘ってみた。なんといったかは詳しくは覚えていない。とにかくクミちゃんと一緒にいたい、そう必死で伝えたことだけ…